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ココロザシナカバ~壮絶な自分史~ 第21話/60話:「職務質問」


ここまでのあらすじ】※このお話は実話です。
岩手→練馬→川口→浦和→茨城・・・と住まいを転々としてきた阿部家。
父の酒とギャンブル好きが原因で、貧乏で夫婦けんかが絶えない。
家計のために小学生からバイトで稼ぐ長女まゆみ(私)が
高校を中退、家を出て、人生初の同棲相手の男を追い出した。
そしてヤクザに拉致され、駆け落ちした母を見つけ出した。
あれから3年。
自分も駆け落ちで結婚し、川崎で平穏に暮らしていたが・・・。






家族が増えるのならと言って、社長が近くのマンションを契約してくれた。
礼金や敷金は給与天引きでいいからと言ってくれた。
家具なども厚意で揃えてくれた。

それは世の中が人情に溢れていた、昭和最後の年のことだった。

マンキさんと入籍も済ませた。

私はきょうだいが気にかかって、たまに家に電話をしていた。
当時中学生の妹、キヨは口が堅かったので彼女とだけ話した。

辛かったけど他の子が電話に出たときは電話を切った。
家の様子をキヨに聞くと「お前たちはお姉ちゃんにまで捨てられたんだ。」と父に洗脳されているようだった。

たまりかねた私は寂しそうだったキヨについ、「こっちに来るかい?」
と誘ってしまった。

「いくいくー!」と電話の先で興奮していた。



キヨはまだ中学生だったので夏休みに数日泊まらせるつもりで誘った。
社長の用意してくれた新居は新築のマンションで、
それも見せてやりたかった。


渋谷のハチ公で待ち合わせをした。


キヨにとっては初のひとり電車だったから、茨城から渋谷までの車中、
とても怖かったに違いない。


数日泊まらせるはずが帰りたくないわ、帰したくないわで、
ずっと居座ることになった。

妹は気を遣ったのか、自分の食いブチは自分で稼ぎたいと言い出し、
年齢をごまかして近所のすかいらーくに面接に行き、仕事を手にした。

とても大人びていたから、まさか中学生とは誰も思わなかったのだろう。

ところがその後、そんなキヨが職務質問から警察に補導されてしまった。
住所は茨城なのだし、中学生なのだから当然である。

居場所が父にバレることになり、父はすぐにやってきた。
妹だけでなく、私も連れ戻すために。

散々ごねられて、私たちはとうとう観念した。
父は彼との結婚を認め、住まいも埼玉県加須市に一軒家を借りてそこで同居することになった。

社長に事情を話して泣く泣く川崎を後にすることになった。
そのとき私のお腹はもうすぐ臨月というところだった。

引っ越してすぐ、出産の前にあらゆるコネを使って超特急で車の免許を取った。

そしてその直後の平成元年12月、21歳になったばかりの私は長男の翔太を2500グラムという小ささで産んだ。

それでも順調に退院できたが、家には誰も私の代わりはおらず、退院してすぐに通常通りの家事が待っていた。

おかげで私は疲れと乳腺炎で40度以上の熱を出し、退院してたった2週間の病院に、親子共々逆戻りして入院した。


入院している間中ずっと、父は毎晩のように入院の原因を夫のせいにして、それを責めていびっていたという。

夫は見舞いに来ては愚痴ばかりこぼしていた。

体調も回復して退院しても、やはり気の休まる時はなかった。

夫は自分に対する父のハラスメントのストレスがマックスに達してしまい、私も板挟みで頭がおかしくなりそうだった、


というか、


もうおかしくなっていた。




つづく



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