日記⑦
本屋で平置きの本を眺めていた。
ふといいなと思ったタイトルの小説があり見てみたら、ネットで有名なインフルエンサーの本だったことで自分に落胆した。
そこで落胆している自分にも嫌気がさした。
自分に正直な人への妬みが、歳を追うごとに増していっている。
ごく純粋に好きな物を纏う彼らを見ると、好きになりたい物でコーティングされた自分が汚らわしいものに思える。
そのコーティングは小さい頃から行われていて、今や音もなくなめらかに出来る程に上達した。
するといつの間にか、“好き”と“好きになりたい”の差異すらも、なめらかに接着されていた。
自分の純粋な思いを知りたくても、その混合物はすっかり一色になっていて、中の一つを手に取ってまじまじと確認するなどというのは、不可能に近い作業になってしまった。
正直な人の中にもきっと、“好き”と“好きになりたい”を混同してる人もいるのだろう。
彼らが屈託のない笑顔で「これが私の好きな物です!」と言い、純粋にそう思いながらも混合物を出していることは知っている。
そしてそれを受け取った人は、灰色の混合物を手に持ったまま「これが貴方の好きな物なんですね!」と純粋に言うことすらも知っている。
それでも、混合物の中身を確認する作業をやめることができない。
インフルエンサーの本のタイトルを良いと思ってしまって落胆した自分を、今日も取り除かなければならない。
マヂめんどぃ。。。
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