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【ミステリー】セイラムの魔女裁判

こんにちはマスター、蓬莱です。

マスターは身に覚えの無い罪を着せられても、自身の潔白が証明でき、相手の言いがかりを全て論破できたら、「どんな状態でも刑罰を免れる事が出来る」とお考えですか?

それとも「それでも追求を免れる事が出来ないこともある」とお考えでしょうか?

実は昔、北アメリカの集落で12人の少女たちが次々と、知り合いを魔女だと告発していき、3年間で200名の容疑者が生まれ、うち19人が処刑され、1人は拷問中に圧死、5人が投獄中に死亡、合計25人の死者を出した事件があったのです。その中には「どう考えても処刑に追い込むには無理がある」という事例が幾つも見られました。でも、その証言も弁明もひっくり返され、命が奪われていったのです。

今回は、集団ヒステリーが巻き起こした悲劇「セイラムの魔女裁判」のお話です。

200人以上の男女が1690年代に魔女だと有罪判決を受けたセイラムの魔女裁判

中世の魔女狩りはヨーロッパで15世紀から始まり、もっとも激しかったのが16世紀後半から、17世紀はじめにかけてでした。そして、セイラムの魔女裁判が始まったのは1692年、ヨーロッパでの魔女狩りは、とっくに下火になっている頃でした。

1692年の初頭に、アメリカ合衆国ニューイングランド地方、マサチューセッツ州のセイラムにて少女に悪魔が取り付いたとされる事件は、ちょっとした占いから始まりました。

それは、使用人のティテュバが少女たちのリクエストに応えて占いを行っていた最中に起こりました。ティテュバにはブードゥの知識があり、恋占いや未来の結婚相手がどんな人か言い当てるおまじないができたのです。

そして、そのおまじないの時に少女たちは、突然、わめいたり、よつん這いで動いたり、痙攣をおこしたり、吠えたりしました。

魔術の実践で告発された最初の女性である使用人ティテュバ

数日後、少女たちを診た医者は、この異常な行動を「悪魔の仕業」と診断したのです。

そして、悪魔の仕業を起こした魔女ということで三人の女性が告発され、「自分は魔女です」と自白をしたティテュバだけが罪を許され、最後まで容疑を否認した二人は殺されてしまいました。

ティテュバの「魔女は他にもいる」という証言に乗って少女たちは告発を次々と行います。告発した少女たちの中にアビゲイル・ウィリアムズがいました。ゲームFateグランドオーダーのアビゲイル・ウィリアムズのモデルになった少女です。

また、最初の告発者でもあり、少女のまとめ役だったエリザベス・ハバート、そして、62人も告発し、ほとんど全ての裁判の証言台に立ったアン・パットナム、この三人が中心となって彼女たち12名は魔女を告発するチームを作っていたのです。

セイラムの魔女裁判で告発された女性を指差す少女達

少女たちに告発された人の中には、とても頭がよくて彼女たちの嘘を見抜き、理性的な弁明に努めた女性もいましたし、信仰心が厚く多くの人から尊敬され、皆から愛されていた女性もいました。そして少女たちのうちの一人の保護者的な人物さえも、次々と容疑をかけられ、殺されていったのです。

「私よりも少女たちを魔女かどうか疑うべきだ」

こういった言葉は裁判中に何度も聞かれましたが、「少女は無垢なのだ」というピューリタンの信仰がその判断を許さなかったのです。

魔女の告発の動きが彼女達から離れて、セイラム周辺にも広がりはじめた時に、突然、この事件は収束に向かいます。

なんと少女たちはマサチューセッツの植民地の総督、ウィリアム=フィリップスの妻を魔女だと告発したのです。そして、その総督の介入によって、この魔女裁判は停止させられ、新たに上級裁判所を設けて審議を行い、全ての、容疑者の罪を許したのです。

マサチューセッツ湾直轄植民地の総督だったウィリアム・フィップス卿

この魔女裁判を終結させたのは、論理的な整合性でも、手厚い信仰心でも、教会の権威でもありませんでした。それは、実質的な権力だったのです。

セイラムで起こった、この魔女裁判は、一般には「集団ヒステリー事件」として知られています。

ところが彼女たちの言葉を集めていくと、果たしてそうなのか?という疑問がわきます。

魔女裁判の公判中に、保護者の一人が「ムチで打つ」と脅した時、「告発は全て嘘でした」と自白した少女が居ました。その少女はすぐに仲間内から魔女として告発され、「魔女の下僕である、あの人に脅されて『告発は嘘だ』と言わされました」と発言をひるがえし、脅した保護者を告発したのです。

また、アビゲイルに関しては、彼女を批判した人が翌日に告発されるパターンが多く、更に彼女は裁判中の3月に「私たちは楽しみのためにやったのよ。私たちには楽しみが必要なの」と述べています。なお、彼女は6月まで記録に登場しますが、それ以降は一切の記録に出てこなくなります。

アビゲイル・ウィリアムズ対ジョージ・ジェイコブス・シニアの証言録取

そして、告発の鬼、アン=パットナムは1706年、教会に「人々を惑わせて迷惑をかけた」という謎の謝罪文を告白の一部として提出しています。その告白には「悪魔に惑わされた」とも書いてあったのです。

悲惨で重たい事件のあったセイラムは、今はダンバースという人口2万5千人の町になっています。そして、ラヴクラフトの書くクトゥルー神話に登場するアーカムという架空の都市のモデルにもなっており、過去にはこの魔女裁判と同様の事件が起きているのです

ダンバーズの国道114号線

今回は、ブログ:オカルト・クロニクル「セイラム魔女裁判―清廉潔白のグロテスク」と、ブログ:世界雑学ノートより「セイラム魔女裁判|原因や歴史を追う!映画にもなった悪名高い実話」、そしてウィキペディアよりお話しました。

蓬莱軒では、知的好奇心を刺激する話題を毎週お届けします。YouTubeチャンネルにもよかったら遊びに来てくださいね、マスター。

それではまた、らいら〜い🖐

蓬莱軒【水曜20時 不思議・科学・都市伝説】
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