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【日々の植物】ヤマフジ

桜の開花時期が過ぎ、つぎに目を惹かれるのは山藤の花だ。

車のフロントガラスの向こう、遠くの山々にも、うす紫色のもやがかかる。

川沿いのガードレールに立ち並ぶ樹々の上、山林と田畑の境目にたたずむ樹上にも。

あたかも、この樹の主人は自分だと言わんばかりの華々しさ。

目をこらして見なければ、からみつく蔓にも気づかない。

それほどに生気がつよい。

家の裏手にも例年必ず、山藤の咲く杉がある。

ブラウンやグレーの入り混じる杉の葉の暗緑色に、霞がかる紫とのコントラスト。

今年は裏庭のツツジにも覆いかぶさるようにして、山藤が咲いているのだった。

鳥や動物たちの助力を得て、知らぬ間に隆盛を誇っているらしい。

台所の窓からも、ながめられるほどの近さ。

葉はかすかな風にもさわさわと、軽やかにひるがえる。

雨天になれば雨粒の重みで、その身はツツジにしな垂れかかり、あざやかなピンクはひっそりと姿を隠す。

連日降り続いている、この藤の雨がやむ頃には。

烟るようなうす紫も、緑の波にさらわれて、いつしか消えてしまうのだろう。

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