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コラム:ナラティブスキル(ものがたる力)を高めるメリット

依田真門(まこどん)

“ナラティブ”という言葉が日本でどれくらい浸透しているかを調べようと大学の図書館で検索したところ、ナラティブに関連して発刊された書籍が、2020年以降急速に増えていたことが分かってきました。

2004.12までの発刊 22冊
2005.1-2009.12発刊 31冊
2010.1-2014.12発刊 30冊
2015.1-2019.12発刊 30冊
2020.以降の発刊 47冊
(蔵書数ベースなので、実際の発刊数はまだかなりあるはずです)

更に判明したのは、2019年以前に出された関連書籍の多くが医療、福祉、教育関連のもので、経済やビジネス、社会変革的なテーマの書籍の大部分は、ここ数年の発刊だったことです。

“ナラティブ”は一般にはまだ浸透していると言い難いですが、多様なテーマで発刊されている書籍が増えているということは、世の中での認知が着実に進んできていると、考えてよいと思います。ビジネスの世界でも、今後急速に浸透が進むものと推測されます。では、ビジネスパーソン、とりわけリーダーにとって、ナラティブスキル(ものがたる力)を高めるメリットは何なのか。ChatGPTの助けも借りて、私なりの整理をしてみました。

中身に入る前に、“ナラティブ”の事例を一つあげておきます。“軽くて暖かいセーター”を写真、サイズ、重量、素材、値段などデータで紹介することはできますが、それだけで買う気にはならないでしょう。ですが、「薄手だし軽かったので、くるっと丸めてビジネスバッグに突っ込めました。朝晩も零℃前後まで冷えたのですが、おかげでコートなしで済みました。これで5,000円は、嬉しいですね。」てな話になると、だったら一つ、となる気持ちは分かりますね。

ナラティブスキルとは、様々な場面でこんな感じの“ヒト目線の”伝え方が出来るスキルという感じで捉えて頂くと良いと思います。
では以下、重要度の高いメリットを4つお伝えしましょう。

第一は上記の様に、商品とかサービスの価値や魅力をうまく伝えられる様になることです。この力は、営業パーソンは勿論ですが、商品開発とか企画担当の方などにも大いに求められているスキルでしょう。

第二は、仲間とかお客さんとか同僚とかとの感情的なつながりを強化し、チームの一体感を高めたり、役割を超えて相互支援の関係を作っていけるようになることです。心理的な絆が生まれることで、同僚や部下のエンゲージメントは、自然に高まることが期待できるからです。

三つめはメッセージの説得力を高められることです。売り上げを上げろ、ミスを減らせ、の様なメッセージはそのまま伝えても効果が無いことは言うまでも無いでしょう。聞き手に問題をジブンゴトとして捉えてもらい、それならやれる、とか、だったら頑張ろう、という気持ちになってもらうことは、ナラティブを工夫することで可能になってきます。

そして第四は、教訓や知恵の伝承が効果的に出来る様になることです。特に数値や形で示せない“暗黙知”は個別化、リモート化が進んだ昨今、伝承が極めて難しくなっているものですが、先輩・ベテランが個別状況の下で何を考え、どう行動したかを伝える、ナラティブならではの知識伝達を通じて一定範囲でその壁を超えることが可能になってきます。

以上、ナラティブスキルを高める主なメリットを、ご紹介しました。如何でしたでしょうか。では、どうやってスキルを高めたらいいのか?知りたくなりますね。それはまた今後の機会に、少しづつお伝えしたいと思います。

_/_/_/_/ ホープワークニュースレター vol.25_/_/_/_/
<希望の便り from ホープワーク協会>2024.4.5