見出し画像

コラム:「防災小説」ってご存知ですか?

依田真門(まこどん)

元旦はスマホの警報にビックリした方もおられたと思います。能登半島の深刻な状況が徐々に見えて来て、日頃の備えの大事さを再認識された方も多いのではないでしょうか。実は昨年末から、年明けの本コラムは“ナラティブ”で行こう、と決めておりました。被災地域の早期回復を祈りつつ、能登を他山の石とすべく「防災小説」というナラティブ活用例を今回はご紹介したいと思います。

防災対策と言うと「避難訓練」を思い浮かべる人も多いと思います。ですが、あれで防災意識が高まったという人はほとんどいないでしょう。「防災小説」は、そんな問題意識から開発された“ナラティブ”活用の学習法で、昨今中学生を対象とした防災教育として全国的に広がりつつある大変有効な方法です。簡単にご紹介しましょう。

生徒たちは「まだ」体験していない大災害を「もう」遭ったこととして、「自分」を主人公とした小説を書くよう指示を受けます。その際に与えられる条件は、
①指定される災害の状況に基づいて小説を執筆する
②小説のエンディングを“希望”がある内容にする
これを大体1,000字程度にまとめます。

指定される災害の状況はこんな感じです。
『2024年 2月 19日(月)午後6時12分、首都直下型地震が発生。マグニチュード7.3、震度は東京で7弱。後日情報で死者不明者約5万人。』
(ここで想定している災害は架空のものです)
生徒たちは“その時”以降の展開を「もう」起きた事として描いていきます。

ある中学生の作品の出だし。
「僕たちは今、体育館で沢山の人と身を寄せ合いながら避難所生活を送っている。4日前には考えられなかったことだ。…」
続けて被災時点の描写。
「下校途中に激しい揺れが起こり、その場にうずくまった。ケガが無かったものの、一変した町の姿に驚いた。道路はひび割れせり上がり、割れたガラスが飛び散って、電柱や看板も倒れている。僕は変わり果てた町を見て、悲しく、そして怖くなった。…」
この生徒はその後3日間の奮闘ぶりを描いた上で、「この災害を通して僕は、助け合える人間の強さを確認することが出来、人として成長の一歩を歩むことが出来た。」と、“希望”が感じられる言葉で結んでいました。

このアプローチの優れた点は、大災害という新たな“前提”を与えることで、日常の風景を別の視点で見直し、「防災」を自分ごととして捉えられるようになることです。教室では、生徒同士が出来上がった作品を聞き合って気づきを交換し合う様な取り組みもしているそうです。上では中学生に向けた取り組みを紹介していますが、もちろん私達一般人にも、大変効果があるものです。

「防災小説」の普及を進める慶應義塾大学・大木聖子先生のワークショップでは、次の5つの質問に答える形での「MY防災小説」づくりを促していました。
1)その時、あなたはどこで何をしていたのですか?
2)あなたの周り(モノやヒト)は、どの様な状態になっていますか?
3)その時、あなたはどんな気持ちになっていましたか?何を考えましたか?
4)発生直後、あなたはどのような行動をとりましたか?
5)あなたの「防災小説」の、“希望ある結末”は何ですか?

作成に当たって、一般的な防災知識を確認しておくことが重要です。私もネットにある防災のサイト
https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201108/6.html
を参考に「MY防災小説」を作ってみましたが、非常に多くの気づきがあり、色々と備えの見直しが進みました。ご自身とご家族のためにも、この機会に「防災小説」を執筆し、防災意識を高めてみてはいかがでしょうか。

_/_/_/_/ ホープワークニュースレター vol.19_/_/_/_/
<希望の便り from ホープワーク協会>2024.1.12