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蓬莱の妃 1.5章 火の章へ §1



前振り・挨拶


此処を訪れて戴きありがとうございます。
今月もファンタジー小説である『蓬莱の妃』の分割掲載を致したいと思いますのでよろしくお願い致します。

今月は1章《水の章》から2章《火の章》へ移行する章にあたる1.5章になります。
前章(1章)の内容に関しては此処に有りますのでご購読を。


あと1.5章を一括で購読される場合にはこちらまでお願い致します。
あと今回(このセクション(『§』のこと))は短めになっております。



1章2節までの話


西暦2325年11月8日、富士吉田市の宮内家と言う能力者の家系を継いでいる宮内輝夜・咲夜姉妹は前日それぞれの場所にて調査をした後、朝時点での予定では姉妹ともども旧小山村に隠れている子供を確保をする予定だった。
しかし、当日埼玉県の高速インター付近にて『原因不明』の橋脚崩壊という前代未聞の事件が発生した。
急遽その現場には輝夜と偶然に富士吉田まで来た手嶋屋HD代表である手嶋晴が晴れの車で向かい、旧小山村には咲夜と輝夜のモデル仲間2人の助力にて無事子供2人を救助する事が出来た。
だが、そこに至るまでに宮内姉妹以外の人間の暗躍があったのである。



登場人物


 東乃 遠行(とおの おんぎょう):出生場所、年齢不明の京都在住の修験者。陰陽道に長けているものの性格に難があり、元々所属していた所から追放になってからはフリーで京都特別地域内にて裏仕事を行なっている。【火】の能力者として不完全ながらもトップクラスの能力を持っている。性格は起伏が極めて乏しいが相手に対して煽る傾向がある。

 我真 総持(がしん そうじ):日本共和国において現在公式に《帝》と呼ばれている人物。代々我真家というこの国における陰陽道における家系の中心的役割の人間。しかしながら現在のお飾り的な存在に不満を持っており何らかの動きを既に起こさせている。性格は冷淡で自己中心的。元々能力者としては平均より上との評価で奈良の我真家の党首である我真新や富士吉田の宮内家姉妹からは劣っていると言われているが・・・

 三井:京都の御所にて《帝》に仕えている世話人。見た目は60過ぎの老人の風体だが人間離れの能力を持っている。それ以外は全く不明の存在。



§1 8月京都にて、東乃遠行


《真夏の京都、これから4ヶ月に渡る人生最大のミッションを受ける事になった男。彼はとある人間のコピーとして生まれた『最後の旅』に旅立つことになった。》


 「んー、此処に来てしまったもののどうやって連絡しようかのぉ。確かにこの神社の隣にある家があやつらの拠点に違いないかと思うが、何しろまだ誰も帰っていないので確かめようがない。
 それにしても、この社はここ数年で建てられたばかり割には靈的な力が大きくかつ強く感じる。
 だがもう周りが暗くこの辺の状況を視認できん。周りに街灯も碌に無いから余計に位置関係がわからん。・・・参った。」

 西暦2325年11月8日、身長180センチ以上で筋肉質の身体をした男がこんな辺鄙な場所にある神社にいること自体不気味であった。
 が、それ以上に男が着ている行者風、というより本物の行者と言うような格好でその服が所々焼け焦げの跡や解れが目立っていた。どうも男は此処に来るまで色々一悶着があったとされる。

 ボロボロなのは服だけではなく立派である男の肉体にも相当なダメージを負っているようで、男はこれ以上動くことも出来ない感じだった。
 その男は能力者との事だがどういう訳なのか本来持っている『リサーチ』能力が此処では著しく落ちており、能力では此処の情報を仕入れることが出来ずにいた。

 男は背中に小ぶりなバックパックとウエストポーチを身につけており、何らかの事によってそれらも表面上はボロボロになっていたが中身は無事だった事を先ほど確認でき、男にとってはそれだけが今のところの幸運だった。

 その背負っているパックを背中から下ろしてから中から携帯食糧、いわゆるレーションに近いサバイバルに使える食料と水が入っているクリスタボトルを取り出し、特に慌てる事も無くのんびり食事をしていた。
 食糧はまだパックの中にはまだ入っているもののこれ以上は摂ろうとせず食べた跡のゴミと飲みかけのボトルを再びパックに入れて男は境内横にある倉庫内に入り仰向けになって能力を回復するまではじっとしていた。
 とは言え、身体は幾分かは休めることは出来そうだったが今日の事や此処に来るまでの事を考えると精神的に身体や服に付けられた以上のダメージを負わされていたらしく先ほどから、

 「何でこんな事になってしまったのか・・・わからん。」
 と何度も何度も呟いていた。

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2,543字
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物書きの風吹しづるが書いているファンタジー小説『蓬莱の妃』シリーズの次章にあたる【火の章】へ繋がる話になります。 火の章においてのキーパー…

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