見出し画像

蓬莱の妃 2章2節 《火の章》 §3




前振り



いつも来て戴きありがとうございます。
今月はライスワークの方でウェイトがかかっている関係で夜にデータのアップしております。
今月末には半年ぶりに宿泊お出かけ(無論移住調査も含めて)もありますので以前ほどの期待感はだいぶ薄れてしまったかなと思いますが、もう何とでもなれという感じで楽しもうと思ってます。

この節の一括でご覧になられたい場合はこちら(Kindle)でお願いします。
あとこのセクションの前(§2)はこちらにあります。




登場人物



 アルガナ(本名 トゥーラット・アル・モルガナリアス Toratt Al Morganalias):亞人と人間のハーフ。現在高校生の非常勤軍属の子。元『仲介者』佃氏と知り合い。来春高校卒業して、軍属を続けながらも佃氏の会社に就職予定。

 佃 義仁(つくだ よしひと):元『仲介者』、現在はフリーランスの能力者稼業をしている。姉妹とは2年前の事件で(当時は国交省の仲介者)首謀者の一人として敵対をしていたが、その事件を機に退職し元仲介者として活動し始めて定期的に姉妹と一緒に仕事をする様になった。

 フレデリック・E・ウォズニアック(Frederick Edger Wozniak):千葉県成田市内のとあるコンテナハウス内にてフリーの量子プログラマーをしており、量子世界では【分析活動】と『本体』と会話できる数少ない人間という事で宮内輝夜とは《量子ネット》で繋がっており、輝夜にとって数少ない信頼されている人間の一人。
 大昔の血縁でパーソナルコンピュータの共同開発をしていた人間がいて、フレデリック自身はウォズニアック家という人間家系とモルガナディアスの亞人家系のハーフ。モルガナディアスでの名はマージ・モルガナディアス。

 アジル・オーリー(Agile Ollie):千葉県成田市内にて量子プログラマーをしている。フレデリックの同僚。能力者でありハーフさんで、主に量子世界での【諜報活動】のエキスパート。元アサシン。




§3  「ったく、すっかり騙されたぜ・・・俺としたことが」【午後2時過ぎ 佃語り】



《佃はこの日の朝神田にある手嶋屋本社ビルで行われる会合に出席をする予定で資料を用意していたのだが、前日の夕方弟子のアルが血相を変えて事務所に飛び込んできたので彼と一緒に千葉の太平洋沿いにある隠れ家に行く予定だった。
しかしながら、白木駅にて『とある人間』からの連絡が有った為急遽目的場所を成田市内の隠れ家に変更することになってしまった。》



(千葉県成田市内某所)


 俺たちは昨日の夕方、弟子であるアルが血相を変えて帰って来た事によって今日出席予定であった会合を欠席して、かつ千葉県の海沿いの町まで逃避行をする為に徹夜で鉄道や徒歩で移動をしてきた。

 だが、小休止した白木駅という千葉県でも有数の駅の分岐点になっている駅にて所在が割れてしまった。その時『とある援軍』からの連絡&お誘いによって滅多に来ない成田市のほぼ住宅が無い地域まで来る事になってしまった。

 白木駅から【フェイク】でバスに乗り、何とか追跡網から逃れる事が出来たものの、取り敢えずの場所に辿り着かせ無い様に最後の一押しという事で最寄りのバス停より2つ手前のバス停で降りる事にした。

 折角此処まで来るのに体力や精神力を使って来たからにはおじゃんにならぬ様にバス停を降りてからも周囲の警戒をしながら目的地まで向かっていた。

 最初此処に来た時にはこの場所までバスが通っているとは思っていなかった。と言うのは、今歩いている場所も目的地付近も国や県の開発許可規制がかかっており原則宅地自体が殆ど見当らない。有ったとしても規制前に建てたと思われた宅地、と言うより完全に廃墟群になっている。
 とは言え周りには工場や倉庫は廃墟にはならず絶賛稼働中という施設が点在しているので便宜的にバスが通っているのだろう。

 それだけ今向かっている所は辺鄙な所という事でバス停から2キロぐらいは歩く事になってしまったけど、そういう苦労の結果無事にようやく目的地らしい場所に到着したみたいだ。目の前にずっと空き地と廃墟や草むらしか無かった風景だったが、然程大きくは無いが草に覆われては居ない神社がポツンと建っているのが見えてきた。

 その神社は阿佐神社という元々この近辺に住んでいた人にとっての鎮守様という役割をしていたという事らしい。どうも定期的に元々この地域に居た住民の子孫や市が管理していると言う事からみて大事にされている神社だと思う。
 俺たちの目的地はその神社の隣にある4つほど平面連結されているトレーラーハウスであり、入り口は単なる片開きの鉄扉が一つあるだけだ。如何にも古いと言う感じの外観だったので此処まで同伴してきたアルが唖然としながら俺に対して、

 「佃さん・・・此処で本当に合っているのでしょうか? 正直こんな事は言ってはいけないとは思っているのですが、とても人間が何らかの作業なり生活が出来るような雰囲気は有りません。
 見た目は明らかに棄てられたコンテナがただ並べてあると言う感じにしか見えません。」

 俺はアルのこのセリフを聞いてちょっとほくそ笑んでしまった。相当な疲労を抱えており能力自体かなり落ちているとは言えハイレベルの能力者を騙せていると言う事をこれを仕掛けた人間を褒めておこうかなと。

 とは言っても、俺の弟子がこのぐらいの【フェイク】を見通せない事自体問題有るからアドバイスの一つでも言っておかないと。

 「そう見えるのか。ただな。アルさんや工学的に見えている物が必ずしも本物とは限らん。とにかく今は【よく見てみる】事をすれば判るぞ。」

 と言うと、アルはいつも使っている『スキャン』では無く、一部の能力者しか発現しない能力の一つである【クリアボヤレンシブスコープ】と言う術を使ってコンテナハウスを見ると、

 「・・・あ、中に誰か居ます。内部はとても清潔感があり住みやすい感じですね。しかも中型の量子コンピュータもありますね。」

 「んー、俺には内部まで見ることが出来ないな。今使ったお前さんのこの能力、正直俺も欲しい所だけど先天的にしか発現しない能力だとイーティが言っていたな。
 確かイーティの父上からの研究であったが結局やめてしまったとも言ってたな。・・・イーティかぁ、もうやられているだろうな。ほんと残念でしかない。」

 「・・・そう・・・ですか。昨日お会いしてちょっとばかりお話もしましたけど、あの半ギレの輝夜さん相手でも表情を変えず飄々としていた方でした。

 輝夜さんが帰られた後、僕はイーティさんのこの先の事を何となく感じていましたから何か出来る事があればお手伝いをと言いましたけどイーティさんは、

 『あなたはこれからこの国や亞人にとって希望の一粒なのですから、今は自分の事を守って下さい。』

 と一言言って去られました。なんか歯痒いです。」

 「アル、此処で感傷的になっても仕方がない。さっさと中に入るぞ。」

 と言いながらアルの背中を軽く叩き、俺は扉中央付近に右手のひらを添えてから扉にかけてある結界暗号を解消させ、無音で扉が自動で外側に開いたのであっさりと中に入る事が出来た。

ここから先は

5,734字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の2節目の作品でこの…

期間限定 PayPay支払いすると抽選でお得に!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?