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蓬莱の妃 2章2節 《火の章》 §5




前振り



いつも来て戴き有難うございます。
今月は物書きとは別の仕事が立て込んだり、色々顔を出す機会があったりしていますが・・・特段何も動いてない感じの日常を送っております。
それに琴線に触れるという物や人間にももう会えないという感覚もありますので、ひょっとしたら軌道修正をも考慮しないといけないかなとも思っております。

という事ですが、一応いつも通りのご案内。
前セクション(§4)はこちらにありますので、ご覧になってない方はこちらまで。

あとこちらに既にこのサイトで出しているものはこちらになります。




登場人物



 東乃 遠行(とおの おんぎょう):出生場所、年齢不明の京都在住の修験者。陰陽道に長けているものの性格に難があり、元々所属していた所から追放になってからはフリーで京都特別地域内にて裏仕事を行なっている。
 【火】の能力者として不完全ながらもトップクラスの能力を持っている。性格は起伏が極めて乏しいが相手に対して煽る傾向がある。

 ガントレット:本名不明。《帝》側から依頼されて宮内家の動向や妨害活動をしているエージェント。世界中で暗躍している【モルガナリアス族】から独立して暗殺稼業などを行っており、彼自身はイデオロギーでは動かず金銭的な事のみで動く信条を持っている人間。

 室田:元々は奈良我真家に居たエージェントの30代の能力者の女性。正体は《帝》側のエージェント。




§5  ちゃんとおもてなしをせんといかんな【午後2時半頃 遠行語り】



《昨日富士吉田に入った東乃遠行は、《帝》側から依頼された人間が用意した一軒家にて宮内家の姉妹への工作活動をし終えたのだが、それは同時に己の終焉への準備も終えた事も意味していたので遠行は内心穏やかでは無かった》



 元々作り物として生を受けた俺でもその時が来るまで正直居ても立っても居られ無かった。
 しかしながら、側に本名不詳の【ガントレット】という暗殺業を本業にしている奴がいるので、俺のこの心の動揺を表す訳にはいかなかった。

 だが奴は俺の事を今も『自分の事をいつでも殺す事が出来る存在』として認識しているみたいで、その事が奴に対しての《抑止棒》の一種となっているからそう簡単にこの棒を抜く訳にはいかない。

 今俺は奴と恐らくこの世で最後になると思われる食事をしており、室内に配置されているスピーカーからは音楽ネットアプリから流れている何処の国なのか判らない音楽がこの部屋中を流ており、その間互いに話しをせず、ただまんじりと時間が流れている様を感じていた。

 俺は若干眠気を覚えてきたのでガントレットに、

 「コーヒーのおかわりはまだ有るか?」

 「ん、朝に落としたものはもう無いが俺も今飲みたいと思ったから新しくコーヒーを落とそうか?」

 「そうか・・・頼む。緊張感が有りすぎるのは俺でもキツいが、無さすぎるのはこれから戦う相手を考えるとまずい。だから目を醒ますためにも欲しい。」

 「わかった。・・・ん、通信か。」

 とガントレットは端末を手に取り通信に出ると、通信にて話をしている時の奴の表情から一気に緊張感を感じた。
 多分《帝》の付き添いか『三井』かも知れない。

 ガントレットは端末の通信を切ると、俺の方を向いて『出番だ。』と一言言うと俺に自分の端末を渡して、

 「室田に連絡をしてくれ。履歴にあるから。」

 と言った。ならば自分で連絡をすれば良いと思ったが、奴は今通信を受けた人間から俺にこれからの事の段取りをさせろと命令されたからやっている事だろうと。

 俺はこれ以上特に詮索しても無駄だと感じたので、言われた通りに奴の端末を使って室田に連絡をした。

 先方は3コールもしないうちに応答してきた。

 『はい、室田です。』

 「室田か・・・ご苦労。」

 『遠行様・・・ですか。此方は既に出かけられる様に準備は整っております。この病院内は私たちで不要な人間は全て処理をしましたので側で寝ている咲夜と私たち4人しかいません。』

 「・・・そうか、ならば先程の連絡でも言ったが旧社まで咲夜とお前たちは来てくれ。以上だ。」

 『了解致しました。直ちに咲夜を連れて向かいます。』

 と室田が言うと遠行は通信を切って端末をガントレットに返した。

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1,681字
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富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の2節目の作品でこの…

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