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蓬莱の妃 1.5章 《火の章へ》 §3



前振り


いつも来て戴きありがとうございます。
この前振りは奇数回に上げております、本当にたわいも無い文になりますので面倒な方は先に飛ばすことをお勧めします(笑)

前セクション(§2)をご覧になってない方はこちらまで。

因みに分割購読自体が面倒な方は一括で購読できるこちらまで。

追伸:このシリーズのAI翻訳(グーグル先生使用)にて0章の英語版を先日電子出版いたしました。
それに関してはこちらまで。



登場人物


 我真 新(がしん あらた):奈良県五瀬市にある古代からの陰陽道家系我真家の現在の若き当主。当主という割には全くと言っていい程偉ぶる事をしていないと言う人格者でも有る。
日常は自らの術法の開発に勤しみながら五瀬市での商業会の会頭を行っているが周りから何を営んでいるのか不明(一応表向きには奈良県の観光コンシェルジュを担っている)。
しかしながら能力者として日本国内でトップの能力を持ち「鴉」の幹部の一人でもある。
性格はとにかく楽観主義であるがリスク管理において誰よりも用心深い人間。
京都の我真家やその他の術系の人間から常にターゲットにされており人間不信の傾向を持っているが例外として富士吉田の宮内荒太を【じいじ】と呼ぶぐらいに誰より信頼をしている。その荒太から近日宮内姉妹のいずれかの一人の『家庭教師』にと依頼された為に現在富士吉田市へ向かっている最中。



§3 10月伊豆某所にて、我真新


《静岡県伊豆半島東側の海沿いの街黒澤、街並みは別荘地という事で開発された場所という事で整然としている。
その街に奈良から逃れてきた男は逃れたという感じよりも本物の海を見る事が出来た事に満足をしていた。》


 西暦2325年10月某日、静岡県伊豆半島東側の海沿いの街に此処ら辺では見かけないちょっと風変わりな男が2、3泊対応のバックパックを背負いながら海の方向を見て佇んでいた。

 服装は白のカラー無しのシャツと茶系のフルサイズ丈のチノパンを着ていると言う普通の格好だが、ヘアーデザインが今時の女子でもなかなか見掛けない綺麗な『おかっぱヘアー』の男だった。

この街の付近は3日前台風による大風で大荒れだったが今はまだ風が時折強くなる時もあるものの久しぶりに海沿いの街がよく似合うスッキリした空模様になった。

 その時々吹き付ける強い風が男のおかっぱヘアーがグチャグチャになる筈だが男は能力者らしく髪型が崩れないように【力】でブロックしていた。

 この街に降り立った男はどうやら海と言うものにあまり馴染みが無いらしく、降り立った駅から無人タクシーで目的地である海が至近距離にある別荘の前でタクシーを降りて、その建物を背にして軽く伸びをしながら暫し海の方向を眺めていた。

 その一軒家は古ぼけた感はあるものの定期的に手入れされているらしく、庭が古さをより味わいのある感じを醸し出しており男はすっかり満足していた。
 男はドアの中央付近にあるタッチパネルにこの家のカードキーをタッチして家に入り一階の殆ど窓を開け放したら、開けた窓から勢いよく室内に新鮮な空気が一斉に流れ始めた。

 男は2階に上がり1階と同様に殆どの窓を開け、海側の部屋の窓から至近距離で見える白波が立っている海に暫し魅了させていた。

 「ううん・・・やはり海ってこうですわな。大阪湾の工業地帯沿いの海とは全然違いますな。和歌山の白浜と海と同じ太平洋かと思うけど、場所違えがこうも変わるものですかぁ。」

 男の名は我真新、この国の『能力者』と言われる人間の中で最強とされている一人と言われている人間だ。しかし新本人はそういう事や序列には殆ど気にしていなかった。
 ただ自分が生まれた我真家と言う奈良にて古代から継承されている家の当主であり第一継承者と言う事への責務は持っている。

 だが、新が居住していた場所(本拠地)が先月何者かに急襲され戻れない状況になってしまった。しかし事前にその事自体を予測していた事とこういう事を想定していた訓練等を怠っていなかったお陰で奈良我真家側の人的犠牲者は無かった。
 それでも1000年以上に渡り建立されていた寺院や神社は残念ながら燃やされてしまった。その事について、新は元々本人所持してある端末ではなく※1『アノニマスフォン』のニュースアプリにて知る事になった。

※1 アノニマスフォン:一般人は原則「紐付け」されているパーソナルフォンを政府から与えられ生活において不便なく過ごせるようになっているが、一部の人間にとってはそれが業務上『不都合』と言う事になったため許可された人間のみ内密に別の「紐付け」されていない匿名性のある(アノニマス)フォンを持っている。

 同時に恐らく【鴉】からと思われる『念話』にて従者たちは無事逃げる事ができたとの知らせがあった。
 その時新は『鴉も見ていたのならやった輩を捕まえるなり処刑するなりすれば良いのに。』と多少理不尽な想いを抱いたものの、誰より早く逃げた私が言えた事ではないと言う事と此処まで逃げられたのはその【鴉】達の命懸けの『露払い』のお陰だったからこれ以上余計な事は言わない方がいいと思っていた。

 「ま、普段から『みんなが死ぬのは困るので、もしもの事態になったら《死んだふり》をして各々隠れるように』

と全てのスタッフに言っているから大丈夫だと思ってはいたけど・・・まさか2つとも焼き払うとはね。」

 と新は言いながらも、同時に『これからコイツらをどうしてあげようか。』と言う企みをここに来るまで考えていたが、この海近くの隠れ家に着いてからすっかり一時的ながらもそういう鬱蒼とした想いはすっかり霧散してしまった。

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4,685字
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物書きの風吹しづるが書いているファンタジー小説『蓬莱の妃』シリーズの次章にあたる【火の章】へ繋がる話になります。 火の章においてのキーパー…

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