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蓬莱の妃 2章2節 《火の章》 §8




登場人物



 我真 新(がしん あらた):奈良県五瀬市にある古代からの陰陽道家系我真家の現在の若き当主。当主という割には全くと言っていい程偉ぶる事をしていないと言う人格者でも有る。
 日常は自らの術法の開発に勤しみながら五瀬市での商業会の会頭を行っているが周りから何を営んでいるのか不明(一応表向きには奈良県の観光コンシェルジュを担っている)。しかしながら能力者として日本国内でトップの能力を持ち「鴉」の幹部の一人でもある。
 性格はとにかく楽観主義であるがリスク管理において誰よりも用心深い人間。京都の我真家やその他の術系の人間から常にターゲットにされており人間不信の傾向を持っているが例外として富士吉田の宮内荒太を【じいじ】と呼ぶぐらいに誰より信頼をしている。
 その荒太から近日宮内姉妹のいずれかの一人の『家庭教師』にと依頼された為に現在富士吉田市へ向かっている最中。

 宮内 荒太(みやうち あらた):宮内姉妹の祖父。前富士明香神社の宮司。現在は地元の相談役みたいな事をしていながらも孫である姉妹の陰陽師としての『教官』をしている。元『仲介者』であり裏組織である【南朝派陰陽師】の一角としてこの国の代表の立場を担っている。
 性格は周りに対してどうしても言い方で厳しい事を言いがちな人間と思われている。本人もそんな役回りをしていると自覚している。

 久住 静佳(くずみ しずか):富士見明香神社の総巫女長をしており、富士吉田にて副メイド長をしている久住真由佳は静佳の姉である。能力者として姉と実力的に拮抗しているものの特段突き抜けている能力は持っていない事をコンプレックスにしている。しかし周囲の巫女からは絶対の信頼を持たれている。
 その他UPRAでのエージェントでもあり、その際の階級自体は無いが『マスターランカー』という中隊長相当の権限が与えられ海外で幾つかの作戦での成果を得ている。性格は姉よりも快活で食べ歩きを趣味にしている。
 姉とは違い普段は洋服しか着ておらず巫女服はあくまでも仕事着として着ているだけと公言しているが、食べ歩きや洋服代の為の資金調達の為している【裏バイト】では姉と一緒に和服姿を撮ったエイリアス電子ブロマイドやそのアバターキャラである『&meets(あんみーつ)』として活動しているがそれを神社にも周りにも言っていない。




§8 「今回は敗戦ですね。」【午後4時40分頃 我真新語り】



《我真新はなんとか富士吉田まで到着したのだが、残念な事に新が事前予想していた通り既に事が済んだ後だった。それでも新は荒太から依頼されていた事に向けての話をしようとしていた。》



 今日の午前中まで2ヶ月余り軟禁状態だった磯原から、この富士吉田市内の宮内姉妹のお宅が有った場所に到着したのが午後4時40分過ぎになってしまいました。

 此処まで来るのに傀儡にしたUPRJの兵士二人と運転手として嘗て私は仲間と思っていたモーガン(この人も傀儡にしています)と一緒に来た為に思っていた以上に時間がかかってしまいました。

 車を先程まで規制線が張られていたとされる場所に停めて、それより先はモーガンのみ車から降りて目的地まで歩きで進んで行くと、手前に見えている筈の姉妹の家と隣にあった社には複数の【土山】しか無く、社は完全に消滅しておりましたけど家の方は辛うじて骨組みが残っていただけになっており、その付近から半径200Mぐらいの範囲の木々が全て薙ぎ倒されてたり焼失していた様子が見えております。

 私が遠目で此処を見ていた時点では旧社付近に幾つかある【土山】が何故有るのかを理解しかねておりましたのですけど、現地に着いて【土山】群の中心の方をみると、その部分が直径10Mぐらいの球形に地面が抉られている感じがしました。

 モーガンにこの現場の『撮影』を命じると、モーガンが持っていたアノニマスフォンを手に取って、周囲の状況を歩きながら撮影をし始めました。このモーガンの一連の動きが恰もロボットのようで不自然に思えるかなと感じましたが、これから行う《工作作業》においてこの傀儡さんに働いて戴かないと今後のこちらの作戦にかかって来ます。
 何しろモーガンが撮影している端末だけでは無く、この《モーガンの視線》にて【向こう側】に『宮内姉妹を葬った』事を確認させる事によって情報を送らせようと思っております。

 ま、この裏切り者にはもうひと働きをして戴こうかなと思っております。

 私は撮影自体はモーガンに任せて、奥に待たせているお二人にお会いする前に私自身で調べたかったので先ずは先程一番気になっていた《抉られた場所》に向かいました。
 土山群を通り抜けながら、それらを生成させた人間は誰なのかを探って見ると、どうやら輝夜さんが作ったものであるという感じのエネルギーを全ての土山から感知出来ました。

 この辺を焼き野原にしたのが、多分遠行という坊主によって暴走させられてしまった咲夜さんの【火山特性】の力をまんまと巧く利用させられた結果の惨状かなと。

 で、輝夜さんはこの咲夜さんの暴走エネルギーを遮断する為に単なる『シールド』では無く大量に土を被せる事によって空気自体をほぼ完全に遮断させた事で更なる周囲への被害を防いだという感じかなと推察出来ました。

 私が抉られて窪んでいる場所に到着すると、既に跡自体は有りませんがこの場所に3つの身体の後と生体から作られた《水晶体》化した物、多分それらは【結界石】にさせられたのでしょう、が4つの跡が有りました。

 4つの結界石に関しては元々の人間の意思という物の残滓が有りましたが、3つの身体に関しては『二体』しか人間の残滓が有りません。その二体は輝夜さん咲夜さんで間違い無いと思いますが、あとの一体は・・・エネルギーを見ると信じられませんが輝夜さんが作ったと思われるエネルギーを感じました。

 「多分咄嗟にエリアスドールを作ったのでしょう。でも何故作ったのか不明です。それでそんな咄嗟な状況でエリアスドールなんて上級でも最高クラスの物を作れるという能力者になっていたという話・・・流石に古荒太さんからも聞いた事は有りません。
 ま、エネルギーの状態から見て輝夜さんも無事そうなので後で訊いてみましょう。・・・とても興味がありますから。」

 軽くこの場所を見ましたので、今はとにかく先に此処でお待ちしております古荒太さんと、多分富士宮の巫女長さんかなと思われる方にご挨拶をする為に土山群の右側に行きました。

 私が二人にお会いした時、古荒太さんは直立不動でお待ちになっており、巫女さんは所々服が焼けたラフな服装をしていた咲夜さんを片膝に頭を載せて治療をしていました。

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富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の2節目の作品でこの…

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