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蓬莱の妃 1章2節 《水の章》 §1



前振り


皆様いつも覗いて戴きありがとうございます。
今回は既にnoteにて分割掲載している小説の続きになります。
宜しければこの話の最初にあたる0章か、

この章の前の話にあたる1章1節はこちらをお読みいただけると物書きとして大変嬉しく思います。


しかしながら面倒な方は以下に記載いたしますのでご参考を。
因みに今回のセクションは黒田氏しか登場しません。

あとこの節を一括でご覧になりたい場合はこちらまで。



1章1節までの話


富士吉田市にて古からの血族である宮内家の『後継者』として育てられている宮内輝夜・咲夜姉妹。
二人は懇意にしている東京都内の酒蔵である『手嶋屋酒蔵』にて、科学的には説明出来ないとされているトラブルを解決しに行っていた。
だが、その背後には2年前二人が関わってしまった『事件』への関与があるのではと思い、姉妹はそれぞれ二手に分かれたのだが、互いにそれらの【首謀者】とされる人間からの妨害に遭ってしまった。
その際咲夜は調査の時に『隠して』入っていた【ブラックシート】を戴き、輝夜は旧小山村山中にて多数の『ウォーキングデッド』と言う人造人間に遭遇して退けたのだが・・・・



登場人物


 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。一応能力者であるが未開発。



§1 朝は今日も平穏【黒田語り】


《昨晩宮内姉妹の家にて、宮内姉妹と黒田の妻の美紗子の『調査慰労会』を催され、翌朝黒田はこの日都内からくる来客の為の準備と昨日有った車のトラブルを解決するべく朝から忙しくしていた。》


 西暦2325年11月8日、今日も晴天の朝にはなり昨日に比べて気温が5℃ぐらいまで下がり、漸く秋が深くなってきたと言う感覚を朝の空気の中で深呼吸をして体内で深く感じております。

 昨晩は妻とここの姉妹がすっかり呑んだくれてしまいまして、結局彼女の計画通りに帰る事が出来ず姉妹宅であるこの家で泊まっております。

 先程私が部屋を確認した時には、お酒の匂いが充満している部屋の中未だにベッドで爆睡していました。
 未だに妻が何故昨日ここに来たのかわかりませんが、普段の生活では私がお酒を量呑める方ではないので彼女なりに自制をしているのでしょう。
 ですからたまに羽目を外して呑んでも大丈夫な人間が居るのはここぐらいなので来ているかなと勝手な解釈をしています。

 私は昨晩だいぶ日を跨いだ時間まで片付けをしてから一旦家に帰ったものの、布団に入る時間も然程取れそうもなかったので自宅のリビングのソファで仮眠をとる事にしておりました。
 そうしている内に時間が6時を回ると、子供達の世話をして戴いているお手伝いさんが来られました。

 私がいつも通り引き継ぎをしながらふと庭を眺めると、子供達二人がルーティーンにしている「ラジオ体操」を2人揃って寝ぼけ眼をしながらしているのを私は微笑ましく思いました。
 すると、庭から私の姿を見つけた上の子の未絵(12歳)が私に近づき、私から匂っているお酒の香りと母親が今不在(輝夜・咲夜の家に行っている事は知っているかと思われる)という事から、いつ習得したのか判りませんが周りの大人以上に察する能力を既に発揮出来ている感じのセリフを若干上目遣いをしながら、

 「お父さん、お母さんの面倒ちゃんとみてあげてね。あー見えても色々あるのだから。でもお父さんも無理はしない事です。よろしいですか?」

 と言ってくれた。この子は両親よりすっかり大人になってしまったなぁと私はその大人口調をさせている事に却って反省する日々を過ごしています。

 私が姉妹の家に来た7時過ぎには、姉の輝夜お嬢様は既に家には居らず外出をしていました。

 確か昨日(正確には今日の夜中)私に明日の予定という事で私の親父である大悟と富士の青木ヶ原樹海だった場所で発掘調査をしていると言う話をしたのでそれに手伝いに行っているとの事です。
 今日調査する場所がひょっとしたらこの家の古代から伝わっている文書『宮内家系等文書』に記載されている『家基津端』(かきつばた)と言う古代都市の一つとされている所に非常に近いとの事で、輝夜が珍しくワクテカ状態で現場に臨んでいるかも知れません。

 一方妹の咲夜お嬢様は既に出かける準備をしておりました。
 今日はこの家の敷地内にある離れ屋で来春オープン予定にしているサロンの事で打ち合わせをするので、そのために必要な書類等を実家まで戴きに父親である柾城さん(私にとっては腹同じの弟に当たる)の所に行くとの事。

 彼女は私が家に到着した後、ちょっと離れに行っている間に出かけました。
 彼女は既に普通乗用車運転資格を取得しているので、彼女専用の※モビーカーで自由気ままに出かける事が多くなってきました。

 ※モビーカー:Mobile Carの略。以前は『ミニカー』と呼ばれていたカテゴリーがあったが、ガソリン駆動や全電気、水素や水発電式というような様々なエンジンという物が出た為法的かつ技術的整備のために一律の名称として『モビーカー』と改称された。


 私の勝手な思い込みですが、咲夜お嬢様の方は自分で今後の生き方はあくまでも自分で決めると言う姿勢が強く感じており、その点を見て既に一端の経営者の器になりつつあるかなと思います。

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2,214字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章《水の章》2節目。 姉妹が前日調査で出か…

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