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蓬莱の妃 2章1節 《火の章》 §8




登場人物



 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしており、本人が出かけるのはこの地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行う時か、自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルで都内に出かける時しか無い。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 荒太(みやうち あらた):宮内姉妹の祖父。前富士明香神社の宮司。現在は地元の相談役みたいな事をしていながらも孫である姉妹の陰陽師としての『教官』をしている。元『仲介者』であり裏組織である【南朝派陰陽師】の一角としてこの国の代表の立場を担っている。性格は周りに対してどうしても言い方で厳しい事を言いがちな人間と思われている。本人もそんな役回りをしていると自覚している。




§8 「早く戻らないと・・・」【午前11時頃 輝夜語り】



《輝夜は本家に母の想いがこもったものを受け取るだけと思っていたが、荒太から大槻で起っている事件について手伝って欲しいと言われたのだが・・・》



 ただ今日は本家にガジェットを取りに行っただけだったのに、私は今お爺さまからの強引な『お誘い』により急遽大槻総合病院まで行く事になってしまいました。

 乗っている車がうちと同じ車なのですけど、ただいつもと違っているのは運転席には黒田さんでは無くお爺さまが座っていると言う事で流石にいつものように後部座席にてモデルさんっぽく脚を伸ばして一列占領する訳にも行かないかなと。
 と言う事で猫を被るように大人しく助手席に座ろうとした時、

 「おやま、お前さんはいつも後ろの席で御御足をびろーんと伸ばしておるじゃろ。お前さんがいつもやっている通りにせい。儂に遠慮をするなし。」

 とお爺さまからちょっとばかり意地悪な感じのセリフを言われまして、私は内心『な、何でこんな事まで知っているのぉ?』思ってしまいまして、恥ずかしながらお爺さまの仰る通り後部座席から入ってだいぶ遠慮気味に着席後脚を伸ばしました。
 お爺さまはバックミラー越しでその私の様子を見てニヤリとしながら、

 「・・・お前さんも一応大人の対応が出来るようになってものじゃな。感心感心。」

 と言い、私はこれ以上返す言葉が見つから無かったので無言で座っているうちに眠ってしまいました。

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富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の1節目の作品になり…

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