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蓬莱の妃 1章1節 《水の章》 §2



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしているが、この地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行っている。その一方自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルをしている。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 右田(旧姓 手嶋) 更来紗(みぎた さらさ):手嶋屋酒蔵取締役で勇次郎の妻。この手嶋屋本家の次女。普段から清廉潔白で美しい美貌と所作で社員だけではなく手嶋屋のファンやオーナーからも『女神様』扱いをされている。しかし実の姉には真逆な腹黒さを見せている。



§2 これも仲の良い証拠でしょうね【咲夜語り】


《宮内姉妹が依頼で向かっているのは東京特別地区外の東村越市にある古くからの酒屋業をやっている手嶋屋酒蔵。その場所にて『原因不明』な事が起き二人はその調査に向かっている。》


 結果的に私の言い出しっぺになったお胸の大きさがどうだかという本当にしょうもない会話をしているうちに新宿行きの特急あずさが入ってきました。

 予めその電車の指定席がある車輌出入り口で待っていたので慌てる事も無く乗車しました。
 車内に入ると乗客が平日の昼間近くという時間に関わらず私達の乗っている指定席車輌の座席の8割ぐらい埋まっておるような感じです。

 私達が産まれる前の話では太平洋側の東海道沿いに新幹線が通っていましたのでこの路線はどちらかと言うと山梨や長野に行く時に使うような感じでした。
 しかし、富士山噴火によって通っていた新幹線が寸断され未だ新幹線が通っていないのでリニア線が首都間直通路線を担っており、その間にある街を特急として繋いでいるのがこの路線の役割として格上げになったと言う事らしいです。
 最近塞がっていた東海道本線が開通になりましたものの今のところは東京~静岡間を特急が通るという形になっているらしく、それらを将来的に名古屋まで延伸させると言う話が現在進行形で進められている所とも黒田さんが言っていました。

 私は久しぶりの電車での都内に行くという事だったので仕事と言いながらもワクワクしていましたが、姉様は余程大槻駅でのファンサービスをしてストレスがかかったのか窓側の席に着席してすぐに水入りのボトルとお菓子を勢いよく戴き始めました。
 私は水いりのボトルを取り出してペラ1で事たりている今回の仕事の依頼書を軽く眺めながら、先程購入したお菓子を一緒につまんでいたものの然程話すネタが無かったので互いに会話らしい事が無かったです。

 特急が八王子駅に近づいていた事を車内アナウンスで知らされたのでいそいそと降車の準備をしていた所、姉様の方を見るといつの間にか寝てしまっていたので無理矢理叩き起こして何とか八王子駅に降りる事が出来ました。

 姉様は叩き起こされちょっと不機嫌そうでしたけど、乗り換えで降りた八王子駅のホームを眺めると思っていた以上の人混みに怯え始めたみたいです。

 「さ、さ、咲夜ちゃん、八王子ってこんなに人いるの?・・・駅にこんなに人がぁ・・・怖いよぉ。」

 そりゃ普段こんな人がいる場所に居ないから仕方がないのかなと思いますけど、月1にモデル仕事で都内に行っているのだからもういい加減に人馴れをしてもらいたいものです。
 何しろこれから行く場所は地元の中でも繁盛店ですから更に密集しており、このぐらいの人混みで怯えているようでは仕事になりません。

 とは言うものの今回は姉様の能力頼りの面が大きいので宥めないといけません。
 そこで、姉様は都内の撮影場所やスタジオに月1から2ぐらいは行っているぐらいですから人混みぐらいは馴れていて怯えるなんて冗談でしょと思われますが、姉様が都内行く場合は大抵黒田さんがスタジオや撮影場所に車で直行するので人混みの中を移動するという事はしていないのです。まさしく箱入りモデルさんなのです。

 ですから先程大槻駅で電車待ちをしている姿を見ること自体かなりレアだったのです。
 本人独りでは余程の事がない限り電車で出歩くと言うことはしないのです。

 それで、姉様が大学生していた頃はどうしていたかと言うと、姉様が通っていた二つの大学のいずれも場所こそ違いますが海外の大学に行っていました。
 その時借りていたマンションはこういう姉様の事を考慮してマンション棟内に食堂やコンビニがあるマンションを選んでいましたから敷地外に出かける事は殆どしなかったとの事です。
 学校行く時にはマンションから自動運転の送迎車を利用して通学して、出掛ける必要が無い共通科目の場合は自宅からリモートで授業を受けたり試験を受けたりすることを選択していたので問題無かったと言ってました。
 ですから大学に行く場合は研究室にて教授からレクチャーを受ける時ぐらいと言う話をしていました。そのせいか学友同士でどこか出掛けると言う事は全くせず、専ら送迎車を使って図書館や地元の資料館に行っていたという非常にボッチで寂しい学生時代を送っていたらしいです。

 それでも姉様がわざわざ海外まで留学してまで大学に行っていた言い訳として、

 『あくまでも学びたい事がその大学に有り、それがたまたま海外に有っただけのことなのよ。
 それに学生時代全く引きこもっていた訳では無かったのよ。考古学の研究をと入ったオランダの大学では夏季スクールでトルコのカッパドキアに2週間採掘と修復をしながらも現地の発掘スタッフの方々と仲良くやってしたし。
 ・・・まぁそれ以外はオンラインで単位取っていましたけどね。』

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