蓬莱の妃 1章1節 《水の章》 §4
今回のお詫び
前回が2万字に達してしまいましたので今回は、と思ってましたけど今回も1万字越えになりました。長文になりますがよろしくお願いいたします。
登場人物
宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。
佃 義仁(つくだ よしひと):元『仲介者』、現在はフリーランスの能力者稼業をしている。姉妹とは2年前の事件で(当時は国交省の仲介者)首謀者の一人として敵対をしていたが、その事件を機に退職し元仲介者として活動し始めて定期的に姉妹と一緒に仕事をする様になった。
前沢:現職の国交省の人間。現在埼玉県での利根水域の『改修工事』の監督官をしている。佃とは在籍時エージェントらの世話役をしており、個人的には中学校からの学友でもあり、現在は飲み友達でもあるが・・・
行橋:埼玉県上川市の建設業者からやってきた現場監督、との事だが裏の事にも関わっているという話。性格は極めて粗雑で年齢にそぐわないレベルの思考しかない人間。
§4 おじさまも色々な方が・・・いますね【咲夜語り】
《東村越の手嶋屋酒蔵の調査を終え、姉妹はそれぞれ異変の有った『水』を採取している場所にそれぞれ向かった。
咲夜は埼玉県内の採取所近くの調査へ行く為に待ち合わせの駅に行くと、過去に『とある事件』にて因縁のある人物が待っていた。》
現在14時50分、ここは埼玉県の東光鉄道本羽川駅。東村越から電車を使って2時間以上かかってしまいました。
駅舎としては先程の東村越駅よりちょっと大きめか同じぐらいの規模なのかなと思われます。此処も乗り換え駅になっており、この周辺での中心街にもなっているようです。
私はこれからこの地域に詳しいとされる元『仲介者』の方と待ち合わせをするためにちょっと急ぎ目に駅を降りましたら、待っていたその方は昔私達と因縁があった方でした。
まぁこの人なら問題ない人選ですが、あまり触れたくない因縁なので・・・正直複雑です。
その方は既に車を駅前に止めて待っていましたので私は早速その方の方に向かって行きました。
「すっかりここまで時間がかかってしまいました。今日はお願いいたします佃さん。」
その方は元公務員であり元仲介者、現在はフリーランスの能力者としてこの埼玉県北部あたりを活動拠点している佃義仁さん。年齢は資料だと44歳だから黒田さんと同じかなと。
体格は一応肉体労働も出来そうな雰囲気ですが、姉様よりも若干華奢に見えます。
まぁ180センチ近くもあり普段から本家の歴戦のエージェントさん複数と格闘戦術や呪術を鍛えている大女と比べる事自体どうかと思いますけど。
この方は色々な省庁で仲介者をしていたので、私達では辿り着けない人脈を持っていると言う事ぐらいしかわかりません。私たちと因縁があった時には国交省の仲介者をしていた時期でした。
私は軽く挨拶をした後、姉様から『これを渡して』と言われた手書きのメモを渡しました。
佃さんは軽くメモを眺めて『ふーん』という鼻声を出した後、そのメモを自分の上着ジャケットのポケットにしまい込みました。
「こちらこそよろしく・・・まぁあの時以来だなお嬢さんとは。以前はこれから対面できるどうかかわからんけど《あちら側》での宮遣いだったが、今回はあんたら姉妹の手伝いとな。
まぁ、人生とは常々解らんものだな。
黒田氏からはいつもと違って『小さい方』が行きますのでエスコートをお願いしますと言っていたから駅で気のつよそうな小娘を見たらあんただった・・・わけだ。まぁよろしく。」
佃さんは若干しゃがれ声で呟いた。確かに佃さんが言っているように『人生って解らないものだな』と黒田さんも言っていたのを思い出します。
黒田さんも私たちの名付け親にならなければ今頃富士吉田市には間違いなく居なかったとの事を言ってました。
佃さんとは今から2年前の東京特別区の羽馬空港近くにある《穴熊稲荷》での霊力暴走事件(私たちは暴走実験と見ていますが、未だに不明)で彼は役人側の仲介者として私達に結果的に敵対した人間でした。
その時私達が結構こっぴどく佃さん含めた仲介者や能力者を一時的に『無力化』して一応収まった事になっています。
姉様とは既に何度か仕事をしているのでもう変なわだかまりは無くなっているのかなと感じては居ますけど、本当に大丈夫かなとも思ってしまいます。
佃さんはその私の心を見透かしたような台詞を言ってきました。
「でかい方と仕事した時に既に言ったけど、あくまでも仕事上で行った行為でしかないのでもうそちらが気にすることはもうしないでくれ。
俺は二十歳になったばかりの小娘に過去の事でいつまでも愚痴る人間では無い。
・・・まぁ仲介者としてはまだ成人にもなっていない小娘2人にこっぴどくやられたと言う事が却って役人を辞めるきっかけになった。多少なり思い上がっていたのかなと自分ながら反省した。
それにあの『無力化』された後、デカブツさんがあんたの手を引いてさっさと現場去って行き、
『これらは貴方たちの不手際ですからこれ以上はお任せします。』
とそこに居た警視庁4課のエージェントに捨て台詞を言い俺たちの処分を丸投げしたと言う話だったな。
その事であんたら二人は未だに警視庁での『ブラックリスト』に入っているとの事だ。
それを良いことにデカブツさんも余程のことがない限り役所絡みの仲介者仕事はしなくて済むと言っていたけど。
確かにあの時あそこに鎮座していた《特級クラスのスピリット》を説得すると言う『出来るか解らないような尻拭い』と言うような仕事なんぞ二度とやりたく無いだろうな。」
佃さんのこの台詞で思い出しました。姉様や黒田さんはこの事件以来役所絡みの仕事を出来るだけ受けていなかったなぁと。
でも今回姉様は『いつもお世話になっている手嶋屋さんが困っているので仕方が無いかな』とは言っていましたけど。
今回は何か段取り良すぎて姉様はまだなんか隠しているかなと思います。
「まぁ、ここで色々話してみても無駄な時間になってしまうのでとりあえず急いだ方がいい。」
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蓬莱の妃 1章1節《水の章》
富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章目にあたる作品になります。
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