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蓬莱の妃 1章1節 《水の章》 §8



登場人物


 榊原 由希子(さかきばら ゆきこ):現職の仲介者、という話で上川浄水場にいるが真偽は不明。裏との繋がりで在籍をしており今回の事件にも大きく関わっていると思われる。部下に自分専用の運転手、取り巻き(彼女は『狗』と呼んでいる能力者)が4人いる。性格は非常に傲慢で粗雑で倫理観皆無だが、彼女が『あの方』と呼んでいる人に関しては絶対なる信仰を持っている。佃からは『ゲス女』と呼ばれている。

 城戸 正三(きど しょうぞう):現在旧小山村の廃トンネルおよび近隣の隠れ施設にて人造人間を開発及び製作をしている科学者グループの責任者。元帝都東京大生物学教授だが倫理的に問題あったために学会と学校から追放されてしまった。だが本人は復讐より完璧な人造人間を作り出す方に専らの関心と情熱を持っている。無論人間としての倫理観は皆無。との事だが嘗て大学教授だった頃は学生に対しておおらかで【学校一のコーヒーマイスター】として尊敬されていた。



§8 いい実験体を見つけましたわね


《旧小山村に調査で入ってきた宮内輝夜に数百体の実験体を消滅させられてた後、トンネル跡を利用した研究所に埼玉から『ゲス女』こと榊原由希子が狗と呼んでいる者を率いてやってきた。》


 一方、榊原由希子と取り巻き2人(狗1号・4号)は上川浄水場から車を走らせる事約2時間程で旧小山村にある【とある実験場】に到着した。

 「さすがにこの時間になるとここ以外に灯りらしいものは無いわね。相変わらず何も無い所ですわ。
 4号、あれを持って来て私に付いて来なさい。1号は取り敢えず待機、と言いたい所だけどあのデカブツらに潰された者の残骸があるかどうか確認してきて。
 何となく何も残されていない感じもあるから無駄になるのかも知れないけど。よろしくね。」

 「了解ですマム。私はリサーチ機能ありますからある程度の確認は可能です。」

 「・・・1号、相変わらずアンタが一番出来が良いわね。期待しているわ。」

 と由希子が言うと、1号は闇の中に飛び込むように周囲を探索し始めた。

 「さて、4号行きましょうか。あの方から届きましたこれで今度はあの『ゲテモノ姉妹』を抹殺できる代物が出来るかも。」

 と言って、元神姫トンネルだった場所に作ったと思われる研究所の中に入って行った。
 そこには4人程の科学者らしい人間たちが昼夜問わず研究らしき事をしていた。
 それらの研究者の中で背筋が丸まっており、不摂生を重ねている感じのふくよかな体型をした初老の科学者が由希子の前に陰惨な表情をしながら現れた。

 「榊原さん、この場所に夜遅くに来られるとはこちらとて困りますのぉ。
 それに今日は私の丹精込めて育てた実験体たちが何しろ400体以上消滅させられましたものですから、研究員たちがたいそう悲しんでおりますのですわぃ。」

 「・・・それはお気の毒ですわ。確か千体ぐらいは居たと聞いたけど、その内の4割やられちゃったの・・・そりゃ残念ですわ、ほほほ。
 それより昨日『あの方』からこれが届きましたわ。これで漸くそのデクの棒も役に立つのかも知れませんわね。」

 と由希子が言うと、4号がこの科学者にアタッシュケースを開けてその科学者に見せた。
 するとその科学者は目を輝かせて、

 「いゃぁ、漸く届きましたかぁ。これでこの子達を儂が想定したぐらいの者に出来ますわい。
 まぁこれで儂達が望んでいたレベルの『戦士』が出来上がりそうだと思うだけでも、儂は喜びに打ち震えそうですわい。
 それにこの村にコソコソ隠れていた輩の中に『いい実験体』がおったのじゃ。
 あの廃工場の中に居たので我が子達で捕まえた。一応我が子達も普通の輩には充分役立っておりますじゃろ。」

 「・・・あら、あなた達にしてはいい仕事されましたのね。これが役に立ちそうですわ。
 何しろ今までのように死人を利用するより生の人間に使えばもっと強力なクリーチャーが誕生しますのよね。
 そうしたら『あの方』に良い報告ができ、貴方の子供たちを葬ったデカブツを葬り去る事も出来ますわね。私達にとって一番邪魔はあのデカブツ女だけですから。私も今から楽しみですわ。
 そうしたら貴方もこれを機にまた学会に復帰できるかも知れませんね。頑張ってくださいな城戸博士。元帝都東京大生物学教授である貴方が再びトップに返り咲ける事を祈りますわ。」

 と由希子が口上を垂れていたが、城戸博士はその由希子の話を殆ど聞いておらず4号からアタッシュケースを戴き、それらを再び開き中に入っていた10本のアンプルと注射器が無事破損しないように綺麗に保管されていた様子を見て歪な満面の笑みをしていた。

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402字
既刊している電子書籍が1記事1万字以内程度に収まるように再編集しておりますので空いた時間に読めます。

富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の1章目にあたる作品になります。

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