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蓬莱の妃 2章1節 《火の章》 §1



前振り・ご挨拶


いつも来て戴きありがとうございます。
未だ電子書籍から脱却していないファンタジー物書きの風吹しづるです。
前章はお初の人間がごっちゃり出て来ましたが、今章はそれらの人間が『とある1日』の中でいよいよ起動する感じの章になりまして、宮内姉妹にとって色々大変なことになってしまいます。

今回も既刊の書籍から分割掲載されており、出来るだけ(セクションごとで分量が変わりますが)1万字ぐらいで掲載できればと思っております。
それで前章の1.5章のnoteのマガジン(有料)はこちらになりますのでご購読を願います。

あとこの章を一括でお読みになりたい場合はこちらまで。

ではこの章においてもよろしくお願い申し上げます。

追伸&悲報:この掲載をするに当たってえらい間違いのまま書籍掲載をしていた事がわかりあたふたしております。(此処では既に修正されております。)
あと、先述している1万字に抑えるとの事ですが・・・越えてしまいました。



1.5章までの話


西暦2325年11月7日、富士吉田市の宮内家と言う能力者の家系を継いでいる宮内輝夜・咲夜姉妹は前日それぞれの場所にて調査をした後、翌日の8日には輝夜は埼玉県での前代未聞の事件が起った為急遽調査に行くことになり、咲夜は旧小山村に隠れている子供を確保をする事が出来た。

これらの事件の裏にはこの年の9月奈良の我真家襲撃、10月川華市にある【結界】消滅、そして奈良の襲撃の主犯格である東乃遠行は我真家当主である我真新を殺害するべく追撃をしていたが、静岡県の富士駅にてそれらのプランが潰えたものの、遠行はもう一つのプランである宮内姉妹の暗殺をするために警戒網を掻い潜り富士吉田市まで来る事ができ、11月8日夜姉妹の家隣の社に隠れる事が出来た。



登場人物


 宮内 輝夜(みやうち かがや):富士吉田市の代表的神社の一つである旧社明香神社の宮司をしている宮内家の長女。普段はニート女子をしており、本人が出かけるのはこの地の古代にあったとされる『富士王国文明』の調査・発掘を行う時か、自らの美貌が災いにより(本人談)雑誌等にてファッションモデルで都内に出かける時しか無い。元々宮内家の血筋として受け継がれているとされる能力により『仲介者』という仕事も行っている。能力において日本でも世界的でもトップクラス。

 宮内 咲夜(みやうち さくや):宮内家の次女。帝都東京大学出身で都内私立大学にて薬学研究の分野で大学院生をしながら個人企業の実質的代表者及び魔法使い研究SNSカンパニー『ウィッチ ド ブリュー』代表者。容貌は姉とは双子ながらも正反対の可愛らしさのある女性だが、言葉遣いに関して(特に姉に対して)は激辛でその他の人に対しては本人から壁を作っている節もある。彼女も姉と同様に能力者であり『仲介者』として活動もする事もある。

 黒田 光流(くろだ みつる):姉妹の名付け親であり二人の世話人。二人の世話以外にも地元の観光協会認定のトレッキングコンシェルジュ。父親の影響で発掘調査や古文書解読も。能力者であるが本人の希望で今のところ未開発。その他姉妹や輝夜のモデル仲間からは『鉄分提供者』とか『師匠』と呼ばれている。

 宮内荒太、久住真由佳、宮内笑美:このセクションでは回想のみでの登場



§1 三日連続、と言うのはちょっと【午前8時過ぎ 黒田語り】


《この日は、黒田は珍しく宮内家本家に呼び出され緊急事態として姉妹に伝えなければならない話しがあり、宮内姉妹は珍しく姉妹揃って【夢】を見たという話しをしようとしていた。》


 西暦2325年11月9日、今日も朝から晴れ上がっておりまして空を見ると殆ど雲らしい物が見当たりません。
 気温は摂氏4℃なので昨日と同じような感じになっており確実に冬に近づいているなぁと感じます。

 でも昨晩家に帰って着替え終わって漸く腰を落ち着けようと思った時、自分の端末に本家のエージェントさんから珍しく連絡が有りまして、

 『黒田さん、夜分遅く失礼致します。明日お嬢様方の家に出勤する前に本家にお寄りくださませ。お館様から黒田さんにお伝えしたい事が有りますので。』

 と言われました。

 セリフを聞いてわざわざ夜遅く連絡するぐらいですから、ここ二日間に起こった事から考えると宮司を辞めたとは言え、相変わらず忙しい荒太さんが私をわざわざ呼び寄せるぐらいの余程の事が起きてしまったのかなと感じております。

 と言う事で多少の覚悟を決めて本家に向かいました。

 私は本家に6時半に到着して、話しを荒太さんから直接今回呼び出した用件を聞くことが出来ました。

 いつもなら姉妹の家には大抵7時過ぎに来ておりますが、今荒太さんから聞いた重大な事をこれから姉妹に通達しないといけないと言う思いを持ちながら、色々通達された関係もあり今日は1時間半遅れの8時半前に到着しました。

 家に入りリビングを見ると、余程の用事が無い限り9時ぐらいまで寝ていると言う輝夜お嬢様が珍しく既に起きており、冷蔵庫から1Lの紙パック入りの調製豆乳を取り出してそれを自分マグカップに淹れて飲んでいました。

 「輝夜お嬢様お早う御座います。今日も昨日に引き続きお早いですね。今日は何か予定でも有るのですか?」

 「黒田さんお早うです。んと・・・今日は特に用事らしい事は有りませんけど、一昨日からの事が有るからと思ってたら起きてしまいましたわ。」

 「ん、・・・その事についてですが、」

 と言おうとした時、咲夜お嬢様が自室から出て来たところ私と鉢合わせになりつつ、

 「あ、黒田さんおはようございます。・・・えっ、姉様が起きている。何か用事でも有るのでしょうか? それで・・・相変わらず豆乳・・・ですかぁ。」

 と自分より姉の方が早く起きていたと言う事に驚きつつ、その姉が自分の苦手にしている豆乳を摂取していると言う様をみて嫌な顔をしました。

 二人ともあまり食べ物の好き嫌いは無い人間ですが、咲夜お嬢様は根っからの豆乳に対してアレルギー(精神的に)があるので他人が飲んでいるのを見る事すら嫌がっております。
 その事を当然知っている輝夜お嬢様はそれを知っているのでわざと爽やかな表情で答えてきました。

 「お早う咲夜ちゃん。・・・これですか? うん今日も朝一豆乳続けていますよ。咲夜ちゃんも飲んだら良いのに。
 きっと咲夜ちゃんの一番のお悩みも解決するかもね。イソフラボンですよ、イ・ソ・フ・ラ・ボ・ンですわ。」

 「姉様、強調しないでくださいませ。私が豆乳苦手なのを知っているのに・・・私は牛乳飲んで紗夜子さん謹製バストマッサージワークまで行っている・・・のですけど。」

 と咲夜お嬢様は言いながら自分のお胸を繁々と悲しそうに見つめてしまいました。
 此処からまた変な言い合いみたいな事になるのが日常ですが、今日はこれから二人に大事な事を伝えないといけないので早々に言い合いにならないようにしました。

 「お嬢様たち、朝っぱらから喧嘩の種になりそうな事を振りまかないようお願いします。」

 「ほーい」

 「・・・はい」

 「で、黒田さん、今日はずいぶん遅い出勤ですけど何かあったのですか?」

 「私の家族での事では有りませんけど・・・まぁそれについては朝食を食べながらお話ししますのでお待ちください。」

 と言い、前日に既に用意したヨーグルトとフルーツのアレンジスイーツを冷蔵庫から取り出し、此処に来る途中で購入したクロワッサンをいつもパン入れに使っているラタンのバスケットに入れ、コーヒーメーカーに粉を入れコーヒーが落ち切るのを待ちました。

 3人それぞれ使っているカップに落としたばかりのコーヒーを淹れてから、カートワゴンに用意したものを載せてリビングに持っていくと、二人とも若干お腹が空き気味だったらしく手早くカートから取り出して食事を始めてしまいました。

 けど二人とも食事前にちゃんと手を合わせてから戴く所作は忘れて居なかったので、こういう些細な所で教育の成果は出ているのかなと思ってしまいました。

 家の端末からBGM代わりに地元のラジオ放送局の番組を流して、3人は暫くは黙々と食事をしており私が今日遅れた理由諸々を二人に伝えようとしたら、殆ど食べ終わったと見られる輝夜お嬢様が今朝久し振りに明晰夢を見たと言って話をし始めました。

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富士吉田生まれ育ちの美人姉妹で能力者である宮内輝夜・咲夜姉妹が活躍するファンタジー小説の本編の2章目にあたる《火の章》の1節目の作品になり…

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