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川柳川柳の歌はもう聞けない〜寄席の華が逝く

川柳川柳の訃報が流れた。川柳川柳、カワヤナギセンリュウと読む。落語家である。ほとんどの人は知らないが、寄席で川柳師の高座を一度でも観た人は忘れることはない。

「ガーコン」、川柳の十八番の新作落語。戦前・戦中・戦後の日本の状況を、流行歌を連ねて回想する。私がよく遭遇したのは、川柳師が70代の頃だったが、見事に通るきれいな声だった。川柳が高座に上がると、どんなに沈んでいる客席でも、一気に盛り上がった。

浅草演芸ホールで、前方に座るうるさい小父さんを見事にたしなめていた光景も懐かしい。様々な意味で、寄席には欠かせない、“鉄板“芸人だった。

寄席の短い出番ではもの足りず、神楽坂毘沙門天で開催された川柳川柳独演会にも行った。独演会で古典をみっちり、などということは勿論なく、川柳ワールド全開の会となった。

そもそもは、昭和の名人、三遊亭圓生に師事、さん生を名乗った。その後、本人の酒の上のしくじりなど、様々なことがあり圓生から離れ、先代小さんの弟子となる。圓生一門は、落語協会を離れ、寄席の出演ができなくなったので、結果として川柳は寄席の華として活躍できることとなる。

ここ数年は寄席の高座で見かけることはなかった。香港赴任から帰国した2014年から記録をつけているが、川柳川柳の名前はリストにない。最後に観たのは2009年だろう。あの歌をもう一度聴きたかった。

ナポレオンズのポナ、漫才コンビ、ホームランの勘太郎、ここのところ寄席は貴重な芸人を失っている。そして、川柳川柳も逝く。90歳、大往生ではある。ご冥福をお祈りします

献立日記(2021/11/19)
鶏と豚の旨辛鍋



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