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ハヤシライスは「他人以上、友達未満」(その1)〜出会いと由来

子供の頃、ハヤシライスは謎の食べ物だった。TVのオリエンタルカレーのCM、南利明が最後に一言、“ハヤシもあるでよ〜“と言い放つ。私は、「何だかカレーの仲間に、ハヤシというものがあるらしい」と好奇心を掻き立てられていた。

我が家では、カレーはしょっちゅう食べていたが、ハヤシライスは食卓に登らなかった。私の性格からして、母親にハヤシライスを作ってくれと頼んだと思う。しかし、ハヤシライスは登場しなかった。

初めてハヤシライスを食べたのは中学の時である。私が通った学校は和歌山に学舎があり、年に数回合宿生活を過ごした。そこの昼食で初めてハヤシライスを食べたのである。「ハヤシライスって結構美味い」というのが私の感想だった。

ハヤシライスというのは不思議な存在である。カレーのように奥が深いわけではないため、マニアが出現するようなものではない。私も嫌いではないが、カレーほどの思い入れはない。それでも、時折ふと食べたくなる。そして一定程度の満足感を得ながら、達成感は獲得できない、そんな存在である。「友達以上、恋人未満」という表現があるが、ハヤシライスはむしろ「他人以上、友達未満」である。

結果、多くの店でハヤシライスを食べてきたが、何度もリピートするには至らない。大阪人のソウルフード、「インディアンカレー」でもメニューにハヤシライス、試しに頼んだことがある。デミグラスタイプではなく、トマト味がメインのハヤシライスで少しユニークだったが、結局1回食べたきりである。(ちなみにインディアンスパゲティというメニューがあるが、こちらはリピートする)

ところで、ハヤシライスの”ハヤシ”とは何のことか? 私は、“ハッシュド・ビーフ”という料理を知った時、“ハヤシ”は”ハッシュド”から来ていると思っていた。ちなみに、“hash”は“切り刻む”という意味があり、牛肉を薄切りは細切りにして煮込むので、“ハッシュド・ビーフ”なのだろう。ジャガイモを切り刻み、こんがり茶色になるよう加熱したものは、“ハッシュド・ブラウン”である。

ところが、違う説もあるらしいことを目にした。“ハヤシ”は人の名前で、林さんという名前の人が考案した料理なので、ハヤシライスとなった説である。

さらに、この人名説にも異説がある。名前は、“林”ではなく、“早矢仕”だとする説である。そして、この説は本屋の「丸善」がとなえている。

ハヤシライスは友人ではないが、他人ではない。“早矢仕“さんを確かめておく必要があると、私は長年考えていた(明日に続く)

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