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名古屋の名店〜居酒屋「大甚 本店」

何年振りかで名古屋に出張した。かつては、頻繁に行っていたのだが。

とは言え、あまり時間の余裕がない状況がほとんどで、一度は行ってみたいと思っていた店を訪問できていなかった。それが、「大甚本店」である。

名古屋、広小路伏見の交差点のそばに、まるでそこだけ時代に取り残されたような入り口がある。19時頃、入店すると、中は大いに賑わっている。

1階は満席で、案内されたのは2階のテーブル。透明のシート越しの相席。男性1名と女性3名のグループ、業界っぽい感じの人々で、女性の一人は日本語堪能な外国人。隣のテーブルは、典型的なサラリーマン、年配と若目の二人組。周囲を見回しても、なかなか多様な客層である。

新幹線車中でビールはこなしてきたので、飲み物は日本酒。「賀茂鶴」の酒樽がドンと置かれているので、そこから銚子に注がれる。

この店の最大の特徴は注文方法。お店の人から、「料理は下から取ってきて。あと、ボードに色々書いてあるから。分からなかったら店員に聞いて」と言われる。

1階に降りると、ガラスケースに刺身、カウンターには様々な惣菜が並んでおり、これを自分で選ぶ。さらに、焼き物や揚げ物は黒板にメニューが記載されており、その中から店の人に注文するのだが、「2階の店員に頼んだもの言ってくださいね」と言われる。

私は、カウンター上のおからとポテトサラダをお盆に乗せてもらい、焼きハマグリを注文する。1個から注文できるのが一人飲みには嬉しい。お盆に2品を乗せ、2階の席に戻り、焼きハマグリを注文したことを申告する。惣菜も一人にぴったりのボリュームである。

おからはちょうど良い塩梅の味付け、ポテトサラダは胡椒を効かせた大人向きだった。程なく、ハマグリが運ばれる。 焼きたて熱々のハマグリは、ジューシーで旨い。春である。

おからとポテサラを少し皿に残して、第2ラウンドの注文のため、階下におもむく。今度は何にしよう。やはり揚げ物は一つ入れよう。片身が注文単位のアジフライにもひかれるが、この日はハムカツが私を呼んでいた。滅多に注文する品ではないが、なぜか吸い寄せられたのである。

カウンターの上には、良い感じの煮穴子があるので迷わずピックアップする。席に戻り、一本目の日本酒を終え、追加の酒を注文。煮穴子に取り掛かる。甘いかもと、少し不安だったのだが、不安は的中しなかった。良い味であり、穴子も柔らかすぎず私の好みの食感である。

席から見通せる階段をハムカツが登ってきた。その時、私は「しまった !」と思い、声を上げようとしたが、「ハムカツ頼んだ人!」と言われてしまった。「すみません、申告漏れてました」と受け取る。

ハムカツは小さな円盤型が3個、タルタルソースが少し添えられ、別皿でウスターソースも付く。これが絶品だった。まずは何もつけずにかじりついたが、ハム自体が粗挽き感も残るしっかりしたもの。さらに、タルタルやソースで味の変化を楽しめる。

そして付け合わせのコールスローも旨い。絶妙の酸味とキャベツの甘みがマッチングしており、これだけでも注文したいと思うほどである。

酒2本を飲み終え、ちょうど良いかげんである。勘定を頼むと、昔ながらの大きなそろばんを持参し、皿の種類/数で計算する。回転寿司店のシステムと同様であるが、こちらは風情がある。

こうして念願の「大甚 本店」を体験し、帰途についたのだった



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