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遂に始まってしまった〜「大友克洋全集」刊行開始(その1)

「大友以前、大友以後」という表現がある。マンガ家、大友克洋の出現によって、マンガが非連続的に進化したということだと思う。

これまで、マンガについて何本か書いていたのだが、それによって大友克洋の作品を読み返したいと思いが刺激された。しかし、本は実家にあるはずである。電子書籍化もされていないどころか、「AKIRA」以外は絶版のようである。

せめて「童夢」くらい読みたいと思っていたら、講談社から「大友克洋全集」が発刊されると知った。しかも、第1回配本の1冊は「童夢」である。そして、1月21日、新装なった「童夢」が配達されてきた。ビニールのカバーで包まれた本は、マンガというより、美術書のクオリティである。

早速、読み始めた。驚いたのは、数十年ぶりに読み返しているにも関わらず、最初に読んだ時の記憶が蘇ってきたこと。頭の中に刻まれていたシーン、コマが数多くあったのだ。それだけ、強烈な印象を残していた作品であったことを、改めて認識した。

2970円と、確かに高価ではある、それでもマンガやアート、あるいは映像表現に興味のある方は、この1冊だけでも手に取って読んで欲しい。それほどの作品である。

大友の単行本が最初に出たのが1979年の「ショートピース」、続いて「ハイウェイスター」、いずれも発売とほぼ同時に購入した。こうしてフォローする中、1979年に発表されたのが「Fire-Ball」。大友が本格的にSFに乗り出したこの作品は衝撃的だった。未完ながらも、緻密に描かれた世界が、まさしく“大友以後”を示すものだった。私は、雑誌をバラし、「Fire-Ball」を保管していたが、長らく単行本化されなかったので、結構貴重なものとなった。

この全集のあとがきに、大友は書いている。<それまで20P前後の短編ばかり描いていたので、50Pもあればなんでもできるのではないかと思い、SF作品『Fire-Ball』を書いたんです。しかし、これが思ったより難しかったんですね。自分の考えるページ配分が間違っていて、大きく失敗してしまいました>

この経験を糧に挑戦したのが、1983年に単行本化された、大友の最高傑作にして、日本マンガ界に君臨する名作「童夢」である。

私は、発表当時「Fire-Ball」を失敗作だなどと思ったことは一度もなかった。この大友のコメントを読むにつけ、「Fire-Ball」は「童夢」を生むために絶対に必要な傑作だったと感じる。全集刊行が進むと、この作品も再読が可能となる。それも楽しみである

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