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手の中の音楽21〜ブルース・スプリングスティーン “Thunder Road“の正しい歌詞

私はスプリングスティーンの大ファンである。我が家に遊びに来た知人が強制的に見せられるDVDがある。2009年の「ロンドン・コーリング:ライブ・イン・ハイドパーク」である。なぜ、来客はこれを見なければならないか。私は、このコンサートで最前列に位置し、少しではあるが映り込んでいるからだ。映像にはないが、目の前を動くスプリングスティーンにタッチもした。その勇姿を、漏れなく見せられる。

今日は、この日に演奏しなかった曲の話である。スプリングスティーンのアルバムで、最初に聴き込んだのは、やはり1975年の「明日なき暴走(Born To Run)」である。スプリングスティーンの代名詞とも言えるタイトル曲、“Born To Run“はアナログ盤B面の1曲目、そ してA面の1曲目が“Thunder Road“である。

ロック史に残るこの名曲はこう始まる、ちょっと長いが;

♫ The screen door slams Mary's dress waves
Like a vision she dances across the porch as the radio plays
Roy Orbison sings for the lonely Hey that's me and I want you only
Don't turn me home again. I just can't face myself alone again
Don't run back inside Darling you know just what I'm here for
So you're scared and you're thinking that maybe we ain't that young anymore
Show a little faith, there's magic in the night
You ain't a beauty but hey you're all right
Oh that's all.right with me ♫

上記のコンサートでは演奏されなかったが、スプリングスティーン(ボス)のコンサートの定番曲である。そして、いつのころか、曲のオープニングから観客は合唱し、特に中間の“young any more“の部分からは、完全にオーディエンスに委ねられる演出となった。したがって、ファンはこの曲の歌詞は覚えておく必要がある。ハイドパークでは歌えなかったが、私も何度かコンサート会場で歌った。

そんな曲だが、最初の行、“Mary's dress waves"の箇所について、ファンの間で議論が起きたのだ。オリジナル・アルバムには確かにそう記載されている。しかし、実際の歌、その後のコンサートで歌われているのは、“Mary's dress sways“だというのだ。アルバムに記された歌詞は確かに"waves“であるが、聞いてみると確かに。。。。玄関の網戸がバタンと閉まる。歌の主人公が夜の街へと連れ出そうとするメリーのドレスは、「波打っている」のか、あるいは「揺れている」のか。

そして、今般、この問題が完全に解決した。英Times紙によると、ボスは、ジミー・ファロンの「Tonight Show」に出演し、この問題に決着をつけた。彼は、50年前「明日なき暴走」を出した頃は、「自分は“Sociopath(社会的病質者)“だったとし、自分の音楽に関してはあらゆる細部にわたって正確を期していた」と語る。そして、「50年間、自分は“sways“と歌ってきた」とコメントしつつ、レコードの歌詞を朗読する。「The screen door slams, Mary's dress waves」、「これは間違ってる!」。

改めて、ボスのHPに掲載されている歌詞を見ると、“sways“に修正されている。いつこの修正はなされたのだろう。

「明日なき暴走」のプロデューサー、ジョン・ランドーは、正しくは“sways“だと言い、「ドレスは、どうやって“wave“するか知らないだろ」と語る。

ドレスが“wave“する方が、詩的だと思うのだが、ボスが正解をだしたのだから、どうしようもない。これからは、“sways“と歌うしかない。もっとも、日本公演実現はまったく見えない中、将来ボスのコンサートに行けることはあるのだろうか。。。。


*2002年、スペイン バルセロナでのライブ


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