見出し画像

旅の記憶14〜「華麗なる一族」@志摩観光ホテル

WOWOWが開局30周年記念ドラマとして「華麗なる一族」を制作、放送が始まっている。何度かドラマ化・映画化されているが、直近は2007年TBSのドラマ。その時の当主役は北大路欣也だったが、今回は中井貴一、私と同い年である。何かしみじみとする。

“一族”が晩餐を取る場所の一つが、伊勢志摩にある志摩観光ホテルで、このドラマでも現地でロケが行われている。

私は、24歳で結婚し、翌年娘が生まれたが、子供が産まれると旅行もままならないということで、一度行きたいと思っていた志摩観光ホテルに、出産前の妻と行くことにした。

行きたかった理由は、もちろんメインダイニング「ラ・メール」である。名料理人、高橋忠之が創り上げた、伊勢志摩の素材を生かしたフレンチ、「海の幸フランス料理」の名声は、さまざまな場所で取り上げられていた。

チェックインし、通された部屋の窓からの景色は素晴らしかった。大きな窓の向こう、眼下に広がる英虞湾とそこに浮かぶ真珠筏。2泊の滞在だったが、朝に夕に、変化する素敵な顔を見せてくれた。

そして、もちろんレストランである。細かい記憶は残っていないのだが、初日はスペシャリテの“伊勢海老のクリームスープ”と、“鮑のステーキ”。今では、甲殻類のスープ、ビスクは様々なレストランで供されていると思うが、当時〜特に20代の若者にとっては衝撃であった。そして、アワビ。そもそも、アワビを一つ丸ごと食べるなどという経験はなく、それをステーキにして食べる。本当にスペシャルな体験だった。

そして2日目は、同様の素材を別の角度から調理し、新たな楽しみを提供してくれた。そして感動したのは、朝食も含めて暖かいサービスでもてなしてくれるスタッフの対応。朝夕と同じ席で、“ホテルに滞在する”ということを感じさせてくれた。

あれから同ホテルに訪れることはない。高橋シェフも逝去され、今は弟子の一人である樋口宏江シェフが伝統を継承しているようだ。「行ってみたいなぁ」などと、ドラマを観ながら思う

蛇足だが、高橋シェフと帝国ホテルのムッシュ、村上信夫シェフとの「対談 料理長」(柴田書店)は“料理長”という仕事が表現された良書だった。ただ、手元にはない


画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?