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「小林信彦プレゼンツ これがニッポンの喜劇人だ!」@シネマヴェーラ渋谷

小林信彦著「決定版 日本の喜劇人」の刊行も記念して、渋谷のミニシアター、シネマヴェーラで往年の喜劇映画の特集が開催されている。

昨日(5月24日)行ってきた。緊急事態宣言下、映画館は基本的に休館している中、空いているだろうと思っていたが、結構人が集まっている。満員ではないが、そこそこの入り、8割以上は私を含むオッサン。私はその中では若い方という感じの客層である。

この日観たのは2本。簡単に感想を書く。

「続・拝啓天皇陛下様」(1964年) 野村芳太郎監督 渥美清主演

これといって取り柄のない男(渥美清)が入隊、軍犬担当になる。これをきっかけに、京都の奥様(久我美子)と交流。市井では、中国華僑やパンパンと触れ合う。これらを通じて、戦後の大阪が生き生きと描かれると共に、戦後社会の現実が映される。

渥美清演じる人物は、女性に惚れやすく(初恋の相手が岩下志麻)、情に熱く、喧嘩っ早い。後の寅さんに通じる造形である。脚本には山田洋次が参画している。前述の2人の女優に加え、渥美のパートナーとなる宮城まり子が素晴らしい。

華僑を演じる、小沢昭一の怪演に加え、その妻、南田洋子も怪しげな中国語を駆使して好演。藤山寛美、佐田啓二が、出演時間は短いが存在感を示している。


「雲の上団五郎一座」(1962年) 青柳信雄監督 フランキー堺主演

なぜ、今までこの映画は観ていなかったのだろう。傑作である。少なくとも、当時の喜劇人の記録として必見の映画だと思った。“雲の上団五郎”一座は、榎本健一(エノケン)を座長とする旅回りの劇団。団員は、三木のり平、八波むと志、森川信(「男はつらいよ」の初代おいちゃん)。これが、旅先で新進の演出家フランキー堺と遭遇、一座には由利徹、南利明、佐山俊二が加わり、舞台が形成される。

上述の錚々たる喜劇人の至芸が記録されている。フランキーの弁慶、森川の富樫、旅先の興行主の娘、水谷良重の義経で上演される「勧進帳」は、フランキーの魅力が溢れている。

のり平/八波のコンビによる、歌舞伎「源氏店(げんやだな)」のパロディ。切られ与三郎がお富さんの宅を訪れる。「御新造さんへ、おかみさんへ、イヤさこれお富」の名台詞で知られる名場面を、のり平がボケたおす。

フィナーレは、フランキーの「カルメン」。牛は、前足が由利、後ろ足が佐山という豪華キャストである。

その他、興行主に花菱アチャコ、妻に清川虹子。アチャコも良い味を出している。また、全盛期を過ぎていたエノケンは、しっかり存在感を出していた。

これを観られただけで、この企画に感謝する

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