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神田松鯉が読む、赤穂義士になりそこねた男〜新宿末廣亭11月下席(その1)

新宿末廣亭の11月下席夜の部、連日2階まで大入りが続いている。主任は人間国宝の講談師、神田松鯉。中トリに神田伯山柳亭小痴楽も花を添えている。

松鯉先生は、“冬は義士、夏はお化けで飯を食い”と、師匠である二代目神田山陽のざれ句を紹介し、連日赤穂義士伝を読む。私が行った11月25日の演目は「小山田庄左衛門」、聴いたことはないが、下調べなしにのぞんだ。

冒頭、松鯉はこの読み物について、<誰かに習ったネタではなく、速記から起こした>と語っていた。やり手のいなかった演目を掘り起こしたものということであろう。大石内蔵助は、忠義の士として名高い、赤穂浪士、小山田庄左衛助に三百両の金子を預け、浪士たちに借財があれば討ち入りまでに返済しておくよう命じていた。

借財していたものはなく、小山田は三百両に手をつけず、討ち入り前日を迎える。富岡八幡宮に仇討ち成就を祈願し、門前を歩いていると湯屋がある。身を清めようと小山田は湯屋に入るのだが、そこは階上で酒肴/女性を提供する湯女屋であった。

酒を絶っている小山田に女主人は強引に勧め、女をあてがうが、この女は小山田の旧知の下女、お熊が身を持ち崩した姿であった。元来、酒豪の小山田は「徳利一本のみ」と言っていたが、杯を重ねてしまい、討ち入りまで一時仮眠を取ることにする。

お熊に起こすよう命じていたものの、熟睡の小山田は目覚めず、討ち入り参加を逃す。それどころか、お熊にそそのかされ、三百両を持ってお熊と逐電する。

赤穂義士は見事に吉良上野介の首を打ち、忠義の士となり泉岳寺に引き揚げている。そこに、息子に会うべくやってきた小山田の父、一閑。忠義の士と思っていた息子が裏切り者となったことを知り、切腹する。

小山田は金子を元手に医者を始めるが、その後、悪漢に殺される。因果応報という話である。

読み終わり、松鯉は<今日はちょっと陰気な話で>と話した。義士になれなかった男の話、赤穂義士外伝である。とんでもない話だが、私には印象深い講談だった。

長くなったので、そのことはまた明日


献立日記(2021/11/25)
終演後、東京再生酒場で立ち飲み
ハツ、タン、もつ煮込み
寄席からの流れは日本酒である



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