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「聖メリーの鐘」に続いて「我が道を往く」を観る〜出来すぎた公開順

昨日(11月7日)、映画「聖メリーの鐘」を「我が道が往く」と対になる作品と書いた。

1944年の「我が道を往く」、第17回のアカデミー作品賞、同時に監督賞、主演男優賞など7部門で受賞した。一度観たことがあるようにも思うが、記憶が定かではないので、観ることにした。配信サービスというのは本当に便利である。

前回の繰り返しになるが、両作の制作・監督・原作はレオ・マッケリー、主役はビング・クロスビー演じるオマリー神父。ドラマの舞台は危機に直面する教会(聖ドミニク/メリー)で、そこにオマリー神父が赴任してくるところから物語は始まるのは共通である。

教会には長が在任しており、この人物とオマリー神父の意見の食い違いがドラマを回していく設定も同様。この長は、「聖メリー」では修道院長のイングリット・バーグマンだが、聖ドミニクでは年輩のフィッツギボン神父(バリー・フィッツジェラルド)である。

構造的には同じだが、ビング・クロスビーの相手の違いが、映画の性格を違えている。「聖メリー」は、クロスビー/バーグマンの映画〜私にとってはバーグマンの印象が強い〜となったが、 「我が道を往く」はビング・クロスビーの映画である。

クロスビーの歌も「聖メリー」に比べると、より前面に出ているし、少年合唱団の組成も彼の歌を引き立たせる。また、「聖メリー」は教会の中に閉じたドラマだが、ニューヨークが舞台の「我が道を往く」はメトロポリタン歌劇場を舞台に、オペラ歌手のリーゼ・スティーブンスに、彼女の当たり役、オペラ「カルメン」の“ハバネラ”を歌わせるなど、豪華な仕立てになっている。

両作とも充分に観る価値のある作品であり、「我が道を往く」は作品賞獲得、「聖メリー」はノミネーションのみという結果だけで、上下を判断するのは間違いだと思う。ただ、感覚的には主演男優賞も含めアカデミー賞を取りやすそうなのは「我が道を行く」の方であろう。

当時、ビング・クロスビーはボブ・ホープとの「珍道中シリーズ」で映画の世界でもトップスターになっており、映画「スイング・ホテル」の中で歌った“ホワイト・クリスマス”は第15回アカデミー賞最優秀歌曲賞を受賞している。作品賞や主演男優賞は、さらなる箔付となり、映画界的にも望まれていただろう。

こうした背景を考えると、「我が道を往く」の公開は、先に制作が開始していた「聖メリーの鐘」の前に意図的に持ってきたのではないかとさえ思える。 「我が道を往く」は大ヒットし、第17回アカデミー賞を獲得、同時に主演女優賞を獲得したのは「ガス燈」のイングリッド・バーグマン。

そして1945年のクリスマス、アカデミー作品賞の続編、主演男優賞/女優賞獲得の2人が共演する「聖メリーの鐘」が封切られる。なんだか出来過ぎで、見えない力が働いていたようにも思えてしまう


献立日記(2021/11/7)
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