ヴァロットンの“黒“〜「外国人のナビ」@三菱一号館美術館
ナビ派は、ポスト印象派の流れを受け、19世紀末のパリで活躍した芸術家集団。「ナビ」とは、ヘブライ語で「預言者」という意味である。
私にとってのナビ派は、もっぱらピエール・ボナールで、ほんの少しポール・ヴュイヤールやモーリス・ドニがある程度。あとはよく知らない。したがって、フェリックス・ヴァロットンの存在は、毎日通勤の際に通る、三菱一号館美術館のポスターで認知した。
ヴァロットンはスイスに生まれ、<1893年初め、パリの若い前衛芸術家たちのグループ「ナビ派」に遅れて仲間入り(展覧会HPより)>する。スイス生まれで、「外国人のナビ」と呼ばれた。
ヴァロットンの主たるフィールドは木版画である。ちょっとマンガを思わせるような、数々は、洒落ていて、風刺も効いていて、誰もが楽しめる作品群である。
風刺のみならず、当時のパリの現実、さらには政治的なメッセージが込められた作品もあり、現在にも通じるデザインと共に、その頃の時代の空気を伝えてくれる。
彼のオリジナリティが発揮された作品の一つが、連作《アンティミテ》ー“親密さ“だが、一篇の小説のようであり、裏側にはどんなドラマがあったのだろうかと想像を掻き立てられる。
こうした室内を描いた作品を通じ、ヴァロットンの“黒“は、背景、静物、人物を見た目は一体であるにも関わらず、あたかも可分されたイメージとして映し出す。
三菱一号館美術館は、ヴァロットンの作品を約180点所蔵しており、そのコレクションを一挙公開している。よくぞ集めてくれました。
多くのデザイナーに影響を与えたであろう、またこれからも与えるだろうヴァロットンの作品を、今後も定期的に公開して欲しい。
展覧会は1月29日まで
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?