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手の中の音楽17〜コモドア盤のビリー・ホリデイ(その1)

昨日の記事を書くにあたって、Apple Musicで“On the Sunny Side of the Street”を検索していたら、ビリー・ホリデイのアルバムに遭遇した。

ビリー・ホリデイ、1915年生まれで1959年に他界。私が生まれた時にはこの世にいなかったジャズ・シンガーである。ジャズを聴き始めた大学時代、レコード時代に買い集めたものの1枚が、強烈なアルバムジャケットの、ビリー・ホリデイ「奇妙な果実」であった。

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Apple Musicで引っかかったのは、このレコードと同じジャケット、ただ収録曲とその順が少し違うバージョンだった。

ビリー・ホリデイの代表曲と言えば、“奇妙な果実(Strange Fruits)”と言われていた。ホリデイは、キャリアの初期においてコロンビア・レコードから録音を世に出していたが、この曲はコモドア・レコードからシングル・リリースされた(まだLPはない時代だ)。

私が買ったレコードは、コモドアに録音されたものを収録しLPとして発売したものだが、代表曲“奇妙な果実”を第1曲に置き、日本盤のアルバムタイトルは同名とした。この曲の冒頭はこうである;

Southern trees bearing a strange fruit
Blood on the leaves and blood at the root
Black bodies swinging in the Southern breeze
Strange fruit hanging from the poplar trees

南部の木々は奇妙な果実が実る
葉っぱには血が、根元には血が
南部の風に黒い体が揺れる
ポプラの木々には奇妙な果実がぶら下がっている(拙訳)

アフリカ系アメリカ人の虐殺を歌った、重い曲である。この曲が発売されたのは1939年、キング牧師らが公民権運動を繰り広げたのは1950ー60年代である。つまり、ホリデイは人種差別の真っ只中を生き、この象徴的な歌を唄った。

曲は、ビリー・ホリデイの独特の歌声、哀しさが詰まった歌唱に乗り、特別な作品になっている。80年以上の時を経ても、アメリカではBLMが問題になっている。

この曲のおかげで、このレコードは気軽に聞けないアルバムとなっていた


尚、Apple Musicでは、「The Complete Commodore & Decca Masters」というタイトルのBox Setが配信されている。この中のディスク1がアルバム「奇妙な果実」と同内容になっている。

*こちらは、1956年にリリースされたアルバム「Lady Sings the Blues」で再録された“奇妙な果実“


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