〜 風の告白 〜 7. 年代不詳の世紀末






現下の日本の状況をなんと表現すればよいのか、と考える。別に誰に頼まれているわけでもないが、適当な言葉を与えなければ、つまりうまく名付けられなければこのイライラはますます解消されないだろう。

インターネット上を見渡せばオカルトとエロとグルメ情報の大洪水で、拝金主義、権威主義、享楽主義が跋扈し、子どもたちを含む弱者の生命はいともたやすくないがしろにされる。

花電車のアナーキーな能天気さはやや近い感じがして、とくに国際的な舞台設定には合っている感じもする。しかし実態はそんなに明るくも楽しくもなく、地獄のように暗く厳しい。

バカの集まりといってしまえばそれまでだけれども、それではあまりに芸がなく、可愛げもないので、老若男女、広く膾炙するのは難しい。

「世紀末的」という言葉はもともと「フランスの19世紀末的」という意味であり、それは社会が思想的にも経済的にも行き詰まり、病的、退廃的な風潮が現れていることをさす。

まさに日本のいまのこの状況にふさわしいと思うのだけれども、しかし西暦2022年において世紀末というのはどうもピンとこない。世紀末だったら少し前にもう通ったし、といわれそうだ。

ジタバタするなよ 世紀末がくるぜ
欲しけりゃいますぐすがりつけ

とシブがき隊が歌う『NAI-NAI 16』が発表されたのは1998年4月のことだ。あれ以前から日本の世紀末はずうっと、ずうううううっと深く、深ああああっく爛れ続けている。

ああ、これをなんと名付ければよいのだろう。

そ、そういえば神谷沙弥とのタイトルマッチに敗れてギャン泣きしたマスクウーマン、スターライト・キッドが、今年になって自分のことを「年齢不詳の新成人」であると語っていた。

これでどうだ?

「年代不詳の世紀末」

うむ。

頼りになるなあ、女子プロレス。くれぐれも無茶をしすぎないように。




                           (了)






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