〜 風の告白 〜 5. 土下座衛門





静かだ。

とても静か。

どこかで「クックックッ」と奇妙な音がした。

一瞬緊張したけれども、それはなんのことはない私の笑い声だった。

世間もメディアも最近とても腹の立つことばかりなのに私はいったいなにを笑ったのだろう? 

そんなに楽しいことがあったのだろうか? 

キョトキョトしていると、ようやく目の前のモニターにピンク色のたすきをかけてマイクを握る辻元清美の姿があるのに気づいた。

かなりお太りになられたか。毛髪はいつもよりいっそう短く刈り込まれ、まるで面長のモンチッチだ。

両の眉だけが平たく潰れた八の字を描いていて異質。いつのまにかこの人はこういう半ベソ顔が馴染んでしまった。

記事によるとこのときも涙目だったそうだ。

東スポWeb、この写真のセレクトは恣意的ではないのか? 

笑い者にしてやろうと思ってはいなかったか? 

あるいは有権者の印象に残すバックアップ作戦のつもりだったのではないのか? 

私に対してなら効果はいうまでもなく笑い者だ。申し訳ないけれども。

書き忘れた。

今日は7月6日、10日は参議院議員選挙の投開票日。辻元清美は立憲民主党から全国比例区に立候補している。

おやおやおや、こちらには堀江貴文という人が無所属の立候補者、乙武洋匡の応援演説をしている写真がある。

相変わらず鼻の穴がこちらを向いている。泉ピン子と並ぶ見事なピッグノーズだ。

コンセントともいう。

堀江貴文に選挙カーの上に並んで応援演説をしてもらったとして、それが票の獲得に働くのだろうか? 

選挙もユーチューブ化している。

泡沫、素人と身内ばかりで固める。

堀江貴文といえば長野刑務所から仮出所したとき、待ち構えていた報道陣を前になにごとかお詫びの言葉を述べ、深々とお辞儀をしていたお姿を思い出す。

謙虚なのはあれっきり。9年も経てば元の木阿弥。

丸々と太った収監前のソフトモヒカン姿はへずまりゅうに似ていた。

しかし堀江貴文のニックネームはホリエモン。そう聞けば多くの方々はドラえもんが元になっているとすぐにわかるらしい。

私が連想するのは土左衛門だ。

少し前まで土左衛門といえば私にとっては上沼恵美子のことで、しかもそれはキョンシーの土左衛門だった。

上沼恵美子がようやく舞台を降りたいまはホリエモンが土左衛門だ。

土左衛門とは、溺れて死んだ人の膨れ上がった屍をいう。

水から引き揚げられ土手などに寝かされ、かけてあったムシロをめくるとピューっと水を吐き上げる。

上島竜兵に申し訳ない気も少ししないではない。

溺れて死んでも膨れ上がっていなければ土左衛門とは呼ばれない。

つまりいったん水中に沈んで、それから腐敗したガスの力で浮き上がって土左衛門になる。

自殺、他殺、事故死の違いにかかわらず、溺れて膨れれば土左衛門である。

成瀬川土左衛門という江戸時代の力士が名前の由来だそうだ。

そのとき着物の袖からドジョウが出てきたらドジョウエモンになる。

静かだ。

選挙もいまや後半戦でクライマックスが近づいているというのに、まったく静かだ。

私が住んでいる商住混合の近郊では、一度も選挙カーの音声を聞いたことがない。

かつては票をくれといって街角や街宣車の前で土下座する人までいたというのに。

応援するホリエモンには土下座右衛門になって欲しかった。

ドゲジャエモン。

静か。

本当に静か。

静か。

日本が静かに沈んでいく。





                            (了)





「〜 風の告白 〜」次回も続きます。投げ銭(サポート)はご遠慮なく。




こんなものでたいへん恐縮ですが、無断流用は固くお断りいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?