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《レポート》第10回 タンザニア甲子園 〜野球編〜

あれから1年…僕のタンザニア球界との関わりは、去年のタンザニア甲子園からなので、今大会でちょうど1年たったことになる。

最初は女子ソフトボールの指導ということで始まったが、次第に野球のクラブチーム(タイガース)セカンダリースクールのコーチと、幅広くなっていきました。
特にセカンダリースクールに関してはTabsa(タンザニア野球ソフトボール連盟)より正式なコーチの依頼ということで、現地で動ける人間が自分しかいないという事もあるのですが、指名をいただき、光栄だった。

そうやってこの1年、たくさんの年代の選手たちと関わってきたので、当然、選手1人1人にも情が湧いてくる
今回は去年とは違った目線で試合を見ていた。


また今回は、招待チームとして南スーダンの選手団が大会に参加した。これはタンザニア、南スーダン共にJ-ABSの代表である友成晋也さんが普及させたという縁もあり、今回クラウドファンディングを経て、第10回記念大会に南スーダンの出場が決まったのだ。
まだ国際大会にも顔を出していない南スーダンの、歴史的瞬間に立ち会えることとなった。

展望


20歳までという年齢制限があり、タイガースの主力たちは出場資格がない。その中でも何人かはチームアザニアの選手として登録していた。
そしてもう一つ。セカンダリーの選手たちを中心に作られたチームに教え子が何人か入っていた。こちらがチームキバハだ。

野球は、前回の大会を見て感じたのだが、首都圏(ダルエスサラーム)と地方の選手との差が大きいということ。これは今まで指導にあたっていたJICAのボランティア隊員の派遣が、見送られ、より上のレベルで指導出来るコーチがいなくなったのが原因だと考えていた。
今回はその点がどうなっているか、注目していた。

ドドマ


目についたのは投手のアブバカル
力強いストレートに制球力もそこそこある。優勝した南スーダン相手にも通用し、唯一の1点差ゲームを繰り広げた(最終スコア4-3)。
キャッチャーのイマニュエル、ショートのハッサンタンザニアトップレベルの選手で、ドドマがワンマンチームでなく、チーム力でここまで勝ち上がってきたことが分かる。

前回から明らかに大きな成長を見せ、こんな選手が地方(ドドマはタンザニアの首都だが、実質、ダルエスサラームが経済的には首都のようになっている)。にいたのかと驚かされた。



アザニア


前回の優勝チーム。タイガースで教えている選手や、一緒に練習したことのある選手が多く、今回も優勝候補筆頭だ。

注目している選手はヨアキム。投打にチームの主軸となる選手だったが、期待通りの活躍だったようだ。
そして会ったことはないが、事前にジョージという良い選手がいると聞いた。その時には内野手と聞いていたが、投手としての活躍が目立ち、エースの働きを見せていた。
右肩痛もあり、決勝で残念ながら南スーダンには敗れてしまったが、その投球は目を見張るものがあった。
また、セカンダリーの世代にも良い選手が多く、来年以降も期待が持てるチームだった。

ザンジバル


本土からフェリーで約1時間ほどの離島のチーム。今回は直前に日本遠征を敢行し、山形や沖縄のチームとの試合を経て、大会に臨んだ。

残念ながら昨年同様にアザニアのチームに敗れてしまったが、今回もその実力を証明することとなった。ザンジバルの長所はチームワークベースボール5での代表経験もある、リーダー的存在のプリンスがチームをまとめ、試合内外でも一体感を見せる。ラインナップの上位を実力者が占めるが、全体的な選手層の薄さがアザニアとの差ではないかと思う。
しかしチーム全体としては着実にステップアップを見せているので、今後確実に強くなっていくだろう。


キバハ


セカンダリーの選手が中心の若手チーム。まだ野球経験が浅い選手も多く、苦戦は必至だった。しかし世界少年野球大会に出場経験のある選手や、僕が学校で直接教えている選手もいるので、今後彼らの成長次第では、来年は大会の台風の目的な存在になれるのではないか。
今回の悔しさをバネに、1年間しっかり練習して、来年リベンジしてほしい。

南スーダン

噂に聞く通りの良いピッチャーだった左のマワ選手。初めて見るクロスファイヤーにタンザニア選手は手も足も出なかった。それに加え、カーブチェンジアップカットボールと球種も多彩。タンザニアチームは完敗でした。また2m近くある選手が数人ベンチ入りしており、フィジカル面での差も感じた。
初めて見るセンターオーバーのホームランを打つ選手、高い位置から放たれるフォーシームとカーブのコンビネーションが持ち味の選手、個々の能力はタンザニアの選手を上回る選手がほとんどたった。
一方で、レギュラー格とそうでない選手との間に差を感じた。また、守備面ではまだイージーミスもあり、細かい連携プレーもまだ未熟だったので、今後試合をする上で付け入るスキがあるところはその部分だろうか。
いずれにせよ、国際大会に登場する時にはアフリカ球界の勢力図を変えるくらいのインパクトを残すのではないだろうか。

そしてタンザニア甲子園優勝おめでとう!!!


総評


全ての試合を見られたわけではないし、全チームを見られたわけではないが、去年見た時より、全体的に戦力差が縮まってきたという印象だった。これにはアザニアの主力が(年齢規定による)引退という事もあるが、それ以上に地方での投手力が上がっていると感じた。
特にドドマはコーチ陣がしっかりと指導している印象が、試合前のウォームアップのところから垣間見えた。

そして今大会のハイライトは、タンザニア甲子園大会史上初の柵越えホームランが出た事、そして続いて第2号のホームランが出た事。
僕自身も、練習ですら見た事なかったので、とても興奮したし、選手たちの仲間を祝福する姿に感動した。

タンザニア野球は日本人のボランティア指導者が、全国各地で尽力していただいたのが、発展に繋がった要因の1つだと思っている。そういった意味では、日本人指導者が一人しかいない今のタンザニア野球は、低迷期なのかもしれない。しかしそれでも歩みを止めることなく、自分たちの足で歩き始めている。この期を乗り越えた後、また新しい世代たちも力をつけ、今以上にレベルアップした野球を見られるのではないか。そんな思いを抱いた今大会だった。


開会式の様子。
オープニングゲームの前に円陣を組む南スーダン。
ドドマvs南スーダン
チームアザニア。
決勝戦前。南スーダンvsアザニア。
試合後の南スーダンとアザニアの選手たち。
終いには踊り出す両チーム。これぞ世界平和!
閉会式。
集合写真。
大会史上初の柵越えホームランと第2号を放った2選手。
優勝のチームアザニア。(大会規定では南スーダンは特別枠で表彰の対象外のため)

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