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ウマ娘を歴史物として観る

アニメ「ウマ娘」が最終回を迎えた。ある日、ひょんなことからテレビ放映をされているのを観て(日曜深夜というのが何とも上手いセッティングだ)以来最終回まで欠かさず観た。

ツイッターでも書いたが、人気ミステリ作家の伽古屋圭市さんと、やはり人気若手作家の額賀澪さんもご覧になっていたようで、ツイッター上で、更にはサイン会後の飲み会でも、仲良くお話に混ぜていただいた。正直、このネタがなければ、まずこの三人で盛り上がるネタなどないと思うだけに、とてもありがたいアニメだった。

ところで、この「ウマ娘」、歴史小説の要素を多分に含んでいる。ご覧になった方は知っていると思うが、簡単に説明すると、過去のJRA競走馬を少女に擬人化して、彼女たちがタイトルをかけて走ってレースするというものだ。つまり競馬ならぬ競少女であり、ただその名前は往年の名馬ばかりである。ちなみに主人公の名は、スペシャルウィークであり、他にサイレンススズカ、エルコンドルパサー、オグリキャップ、シンボリルドルフ等々、凄い名前が並んでいる。レース名も本物であり、実際にあった場面も再現されていたりする(この再現されている部分が大ネタから小ネタまで実に面白く、過去のレースを知る者ほど楽しめた)。しかし、全部が全部、本当ではなく、ネタバレはしないが、かなり違っている箇所もある。

で、どこが歴史小説かと言うと、まさにそこである。本当の歴史上の出来事に、いかに嘘を混ぜていって、そのエンタテインメント性を高めるかと言うのは、歴史小説のある種のセオリーである。

ウマ娘の場合特に厄介なのは、本物のスペシャルウィークが走っていたのは江戸時代でも、戦国時代でもない。二十年ほど前であり、知っている人が、数多くいる。わたしもそのひとりであるが、そんな人々に観て貰うには、あまりに嘘っぱちばかりではチャンネルを変えられるし、かと言って、そのままでは、昔の映像を見ればそれでいいということにも成りかねない。つまり絶妙のバランスで、虚実が混ざった、奇跡の配合でないとならないのだ。そしてウマ娘は、それをやってのけたと言える。だから、思わぬ出会いだったが、存分に楽しむことができたのだろう。

とても素晴らしい出来だったが、不満があったとすれば、オグリキャップが出走してるのだから、わたしの一番好きなタマモクロスも出走させて欲しかった、ということくらいだろうか。是非、パート2を秋辺りに希望する。


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