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本屋散歩vol.1 【本屋 象の旅】

こちらは散歩をしながら街の本屋さん(独立系書店)を訪ねる連載です。


粋な下町、横浜橋商店街

今回、伺ったのは神奈川県横浜市にある
『本屋 象の旅』さん。
地下鉄ブルーライン阪東橋駅から徒歩5分。

阪東橋という駅は横浜から5駅、桜木町から3駅。割と横浜の中心地から近い立地だ。
にも関わらず地下鉄のアナウンスで「粋な下町」と紹介されるほど古きよき景色が残る街。下町を印象づけるモチーフとして横浜橋商店街がある。笑点で活躍した桂歌丸さんの出身地として名前を聞いたことがる人もいるかもしれない。

魚屋のリアルな匂い、刺激的なキムチの匂い、その他漬物屋、肉屋、八百屋、花屋…様々な匂いが混ざり合う。鼻が楽しい。生きることに直結しているお店ばかりが力強く並ぶ。商店街の中盤くらいからは道が塞がるほど人が溢れ返っていた。パンパンのレジ袋を持つ年配のおばあさん。自転車を押しながら力強く進む女性。手ぶらでゆっくり歩くおじいいさん(パチンコ帰りだろうか?)

とにかくここには剥き出しの生活があって1人で何度も頷いてしまった。そうだよね、みんな生きてるよね。という気持ちで胸が熱くなる。


妙にセンチメンタルになったのには理由がある。実はこの辺りは私が育った街だ。商店街周辺を歩くと今だに懐かしさの破片が転がっていた。もしかするとノスタルジーボーナスが加算されていたのかもしれない。

中でも1番驚いたのは27〜8年以上も前に母と一緒に行った肉屋さんがまだ生き残っていたこと。多少の入れ替え変わりはあるものの商店街自体ほとんど昔のまま存在し続けてた。

大きなガラスが本を魅せる

さてそんなにぎやかな商店街の終盤で、メイン通りをそっと右に抜け出すと『本屋 象の旅』が見えてくる。見慣れた風景に新しい絵が生まれた。オープンしたのは2022年11月だそう。

まず印象的なのが一面のガラス。本が爽やかに目に飛び込んでくる。

清潔感のある店内。綺麗に本が並べられているのが外からも一目でわかる。「ここに本がありますよ!」というメッセージを発してくれてるようだ。本好きからすると建物が光ってるかのように見える。

この大ガラスによって入りにくさは一切ない。静かに、それでいてウェルカムな雰囲気が漂う。商店街での買い物ついでにふらっと立ち寄れるような店構えが非常にありがたい。

入ってすぐに平積みの本たちが並ぶ。私も持ってる話題作からあまり他の本屋で見たことのない渋い1冊まで。

店主の加茂さんにご挨拶。包み込むような優しいオーラで、こちらが本を吟味する姿をそっと見守ってくれているようだった。寡黙で丁寧な人柄は本の陳列にも表れる。

個人的には本棚にジャンル分けのポップがないのが良かった。もちろん「文芸」とか「詩歌」とか「科学」とか「エッセイ」とかはあった方が探しやすい。でもなければないで困ることもない。

むしろ一通り見るようにので偶発的な出会いの可能性が上がる。シームレスな本棚はおもしろい。背表紙だけで「あ、ここから短歌ゾーンになったな」と気づいた自分を少し誇らしく思えたりした。

こちらは大きなガラスの内側。絵本や児童書。大人にこそ絵本を勧めたい派なのでテンションが1段階上がる。

小さいからこそ全て見れる

「平積みにする本の基準とかありますか?推してる本とかでしょうか?」と聞いてみた。すると

「もちろん人気作品を置くことが多いですが平積みだからといって猛プッシュしてるという訳でもないです」

「お店が広くないので棚にある本も同じように見てもらえる機会はあります」との返答。

なるほど。確かに。それは私も感じていた。お店がいい意味でコンパクトなので端から端まで見ても全然疲れなかったのである。大型書店とはまた違った魅力を発見できた瞬間だった。

棚についてのポイントも聞いてみた。

「あんまり棚を詰め過ぎても見づらくなっちゃいますよね。余白をとるようにはしてます。」

これも納得。本がギチギチではなくちょっと隙間を空けたり、面見せをしたり細かい工夫がされていた。音楽で言うところの休符のような感じで一呼吸おける。これも疲れずに本を見れる理由のひとつなんだろう。

週末は遠方から来る人も

滞在した30〜40分の間に単独の男性客が時間差で2組ほど来た。最初の方は本を注文して帰り、2人目の方は注文していた本を受け取りに来たようだった。ネット通販がこれだけ発達していても本屋には価値があるし、必要としている人を目の当たりにできて嬉しかった。

お客さんにはああいう地元の年配の方が多いのか聞くと「そうですね。多いです。でも週末はSNSで知ってくださった方が遠方から来てくれることもあります。」とのこと。
 
地元の人に愛される地上戦とネットで遠くの人にもアプローチする空中戦をミックスできてるのが凄い。これは現代のお店をやるうえで理想系な気がする。

一通りお話を聞いた後、店の奥にかわいい象の置物を発見。その後ろには名前の由来となった象の旅の原著(ポルトガル語)。読んでみてもいいですかとカッコつけて開いたけど1ミリもわからなかった(そりゃそうだ)それでも紙の本には確かな質量と手触りから感じるものがある。勇気を出して良かった。

買った本『私の生活改善運動』

紙袋かわいい。

本屋散歩では筆者が個人的に気になった本を買うのを何となくのルールとしている。今回は安達茉莉子さん著の『私の生活改善運動』という本にした。他の本屋で見たことがなかったことと、タイトルと帯に惹きつけられたことが決め手。私は『独自性がありつつスッと意味が入ってくる言葉の発明』に弱い。

好きな本・気になる本は出会うべくして出会う。

この本をレジに持っていくと加茂さんがお話をしてくれた。この本の作者の安達さんのことや、ゆかりのある妙蓮寺駅に生活綴方さんという本屋があること、街ぐるみでのイベントをやっていたりすることなど。

さらには冒険家の方が運営されてる別の本屋さんの話など。神奈川県内のオススメ店を教えてくださった。今度行きたい。今後はこういう風に店主からのオススメ数珠つなぎみたいにしても面白いかもしれない。


という訳で、この度はありがとうございました!また行きます。


そういえば帰り道は卒業した小学校の前を歩いた。おしゃべりなおっちゃんがやってた人気の駄菓子屋は跡形もなくなっていた。通ってたそろばん塾も看板が消えていた。

そうだ。忘れてた。全てのものが残る訳じゃないんだな。生きてればなくなる物の方が多い。


行けるうちに本屋に行こう。会えるうちに親に会おう。本以外にも収穫があった散歩だった。


ライター/福本カズヤ


全体像。こちらは象の旅Xより引用

『本屋 象の旅』

神奈川県横浜市南区浦舟町1−1−39

・市営地下鉄ブルーライン『阪東橋駅』より徒歩5分
・京急『黄金町駅』より徒歩12分

詳しい営業時間や定休日はお店のX(Twitter)をご覧ください。


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