言葉は私にとけていく


 私が『 毎日読みたい365日の広告コピー』を手にとったのは、大学時代の後輩が国立の谷保で小さな出版社と書店をはじめ、そこに遊びに行ったときです。おみやげに何か買っていこう、と店内をみていたら、面だしで置いてあるのをみつけました。表紙はラムネみたいな色で可愛いし、帯は松浦弥太郎さんだし、何より後輩の推しならプラチナ本でしょ!と、ほくほくした気持ちでレジに持っていったのを覚えています。

 それから一年以上たちました。まだ全体の3パーセントくらいしか理解できていません。というより、ページを開くたびにぐんと世界が広がる感覚があり、いつも3パーセントのところで落ち着いてしまうのです。残りの97パーセントの可能性は秘めたまま。感想はいつも゛うまいこというなぁ“です。

 この本は、商品や企業の魅力を伝えるために考えられた広告コピーを名言集にしてまとめた一冊です。言葉一つひとつが眩しい。例えるなら毎日の通勤路、非日常の旅先、あるいはそれ以外のすべての時間の中で見つけた小さなキラキラをラムネ色の小箱につめこんで「さぁ、これらについてどう思いますか?」「え…どれも素敵すぎて…」この本でいうなら「どれも心に響きすぎて…」でしょうか。

 私がとくに好きなひとつを紹介します。


帰省ラッシュ。それは親を想う子どもたちの行列です。

【DRIVE&LOVE】新聞2011年 

コピーライター:矢野貴寿さん(電通関西支社)  

 

 私の実家はうちから車で10分のところにあり、帰省ラッシュとは無縁です。そんな私でも胸を打たれます。この一言に作者さんはどれだけの想いをつめこんだんだろ。一体どれだけの人がクスリと笑ったんだろう。大切な親のこと、自分がその大切な親の大切な子どもであることを思い出したんだろう。そしてそれはアリの行列のようにたくさんたくさんいることを。

 ページの下のところに「言葉の力ってすごいですね」とさらりと書いてありました。そうですよね、言葉の力ってすごい。この本はすごい力を持つ言葉を美しく展示した美術館のような場所だと思います。

 365の言葉が、全て私にとけていく。とけた言葉は私の心のどこかを巡っています。心が薄まって少しさびしくなった時には、またページを開きたいと思います。

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<読書会の課題本にしたら、こんなこと話したい>

・読書会当日の日付の言葉の印象

・誕生日など特別な日のページの言葉はなにか、それについてひとこと

・目をつぶって開いたページの言葉の印象

・気に入った広告コピー

・あなたの大切な言葉。あなたの心を支えている言葉。

話し合えたら、きっと楽しいだろうな。

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#読書の秋2020 # 毎日読みたい365日の広告コピー

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