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なぜ、今、昆虫食なんだという素朴な疑問

人間が食べられないものを食べ、乳や肉などの資源に変えてくれるもの、それが家畜だ。牛は草を食べて乳や肉に、馬は乗りものにも肉にもなる。家鴨や鶏、豚も、虫や雑草や残飯を卵や肉に変えてくれる。その生命を人間はありがたくいただき、大いに繁栄してきた。
 
現代の牛や豚、鶏などの家畜たちは人間の食べものを食べている。より早く大きくして肉や乳を出し、卵を産ませるためには、エネルギー源として効率の悪い草よりも穀物を食べさせたほうがいい。また穀物は食味も上げてくれる。現在、家畜の飼料はほぼ穀物、主にトウモロコシで、ついでに言うと、肉や卵の価格が上がっているのは、トウモロコシの高騰が原因である。日本の畜産業界は今までに何度もトウモロコシの高騰を経験しているが、代替の飼料はなかなか見つけることができない。
 
牛肉1kgを生み出すのに必要な穀物は、トウモロコシ換算で11kgとよく言われる。これを人間が食べれば飢えは無くなるのでは、ってくらい大量の穀物が家畜に食われ、大量の糞尿が環境中に放出される。糞尿はすべて堆肥になって環境に還元されている、わけではなく、実際にはほとんどが焼却されていて使う燃料も莫大だ。なんてことからSDGs的に一部地域で肉の旗色が少しずつ悪くなってきているようだ。
 
しかしこの問題は急に浮上したわけではない。よく牛のゲップが地球温暖化に、なんてのは10年以上も前から言われていてとくに対策も打ててないからだからなんなんだとも言える。一歩進んで糞尿の処理とか、飼育の方法とか、そもそも飼料は穀物でいいのか的な問題は、一部地域でしか議論されていないし、解決もできない。みんなトウモロコシで作った肉や卵や牛乳の味に慣れてしまって、米や草などで作った肉や牛乳や卵は味がイマイチのわりに高くて売れない。完璧な効率化が図られている仕組みをいまさらイチからやり直すこともできない。問題は積み上がっていくばかりなのだった。
 
で、有用なタンパク源=虫=コオロギである。
 
生育の速さ、飼料、水、廃棄物など、コオロギ養殖は家畜よりも効率がよく、栄養価も高いらしい。「クリケットパウダー」https://futurenaut.co.jp/ によると、100gあたりのタンパク質量は67.9gできなこ(約36g)の約2倍だ。サイトを見ると、まずは優良なタンパク質・食物繊維・脂質源と書いてあり、環境負荷・SDGsはその次くらいのメリットだ。そりゃそうだよね、と思う。
 
もともとコオロギは爬虫類や魚類のエサとして養殖されていた。生産の基盤は確立されているから今すぐに食料に加工できる、という点ですばらしい。しかし肉や卵の代わりにならないという点において代替食品にはなり得ない。昆虫に共通しているエビのようなナッツのような風味を楽しむ食材として受け入れたとして、お好み焼きに入れてもいいとは思うが、お好み焼きにはやっぱり卵が必要なので、んじゃコオロギはなんのために入れるの? と言われるとうーんとなってしまう。
 
コオロギはなにかの代替品というより、新しい「タンパク質が非常に豊富な食材」であり、環境負荷とかSDGsとかいう理屈はくっついていないほうがわかりやすいのではないか。わたしなら、SDGs的に肉はどうも・・・と言われて代わりにコオロギは食べない。コオロギの販売促進は「SDGs」よりも「機能性(優良なタンパク質とかで筋肉の人に売る)」がいいんじゃないかと思うんだがどうでしょうみなさん。
 
しかし筋肉の人がプロテインのかわりにコオロギを食べるかどうか。そこは不明だ。
 

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