ただ居る記。第5回

 先週は居なかったけれど、今週(7/4日)は居ます。ただ、7/18日は居ません。

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 そういえば、久しぶりに結婚パーティに出席した。
 パーティに、着る服がなく。そして、そういうパーティは「黒っぽい、スーツっぽい服」を着るのが常識だったらしいが、もうそういう事も知らなかった私は、ふらふらと、青いジャケットにヒモ靴、といういでたち。「授賞式っすか」と参加している知り合いに言われる。授賞式でも、こんな格好で出るのって、賞金五万円くらいの授賞式なんだろうなあと思う。

 そんな感じで、結婚パーティに居た。

 すごくめでたくて、うれしい、新郎新婦は昔から知り合いだったが、僕の顔を見て喜んでくれた。ありがたい。「おめでとう」を言えるのはありがたい事だ。他人におめでとうと言うと、元気が出る。

 パーティにはけっこう知り合いは居て、久しぶりの人もいて、その再会もうれしかった。挨拶をし、わははと笑い、楽しい空間を味わう。

 おしゃれ飲食店をまるまる貸し切った、立食形式のパーティ。ビールサーバーもあり、自分で注ぐスタイル。出し物をやるのを見ながら、ごはんを食べたべ、出し物を遠巻きにぼんやり見る。

 そんなかんじで、ただ居た。

 一通り、挨拶や出し物がひと段落すると、『ご歓談ください』タイムになる。新郎新婦の周りには十重二十重に囲みが出来ている。知り合いにも一通り話した。そうなると、僕のやることは何かあったかなーと。

 ご飯をもりもり食べる。

 これである。立食パーティのビュッフェ形式なので、ご飯は無限に食べられる。
 だが、無限にご飯があっても、僕のお腹には限界がある。

 何もしなくなった僕は、パーティに「ただ居る」事となった。

 ただ居る。祝福の現場に、ただ居る。ただいて、いることで、祝福する。出し物を見る。出し物を見て、笑う。僕はすごく心地いい。祝福の現場に、ただ居る。なんて素晴らしい事だろう。

 ただ問題は、「知り合いに気を遣わせてしまう」。

 知り合いが、ただ居る僕に、話しかけてくる。
 うれしいし、ありがたいが、ふと勘ぐってしまう。「もしかして、知り合いは友だちもなく、ただ突っ立っているだけの僕を気の毒に思い、話しかけてくれているのではないか」と。

 それでは申し訳ないので、僕はあわててビュッフェコーナーにいき、皿に山盛りのご飯を盛る。
 そして、もぐもぐ食べる。ご飯を食べるのにすごく忙しい感じにして、、ただ居る、を継続する。

 ご飯はすぐ食べ終えてしまった。
 僕のお腹も、限界だ。
 お腹いっぱいで、一人で立つ。ただ居る。そうすると、「友達がいないんじゃないか……」とまた、気を遣わせてしまう。これはいかん。なんとか、這ってでも、ご飯を貰いに行かないと……。
 いったいどうしてるんだ? 他の人たちは。どうやってこの場に、居られるんだ? 気を遣わせないように、どうやってみんな立って、そこに居られるんだ? 何か、空気を出せばいいのか? 気を遣わなくてもいいですよっていう空気を、皮膚から出すのか? 俺はやはり、飯を食わないと、気を遣わせてしまうのか……?

『ビンゴ大会でーす! みなさん、ビンゴを貰いに来てください!』

 助かった。

 僕は、ビンゴカードを貰う。そして、ビンゴに穴をあける。ビンゴに穴をあけるのに、とても忙しい人として、そこに居られる。よかった、これで皆に気を遣わせなくて済む……。

 ただ居ることの困難さを、また味わってしまった。でも、祝福の現場に、ただ居られるなんて、本当に幸福だった。ただもっと「ただ居る」を修行して、他人に気を遣わせない様、がんばっていきたい。
 がんばっていきたいのだ。

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