ジエ子さん。第3回。

【ジエ子さんの今日食べたご飯】

 四月なのだけれど、職場が異様に忙しいのだけれど、私が担当していた案件が向こうのクライアントさんがいろいろあってしまって(けっこう大変な事件。ミヤネ屋に出てた。職場の皆でテレビ見て「おー」って言った。)、そんなわけで案件がぽしゃり、身動きできなくなった。
「今のうち休んで、様子見ながら、またこのままだったら他の違う案件のサポートに入ってもらうから」という雑な理由で、まあ有給消化しとくかという事もあり、二連休。日曜をからめて三連休が突然出現した。

 こんな有給の消化の仕方はいいのだろうか、と思いながら、休みが面倒だ、と思って寝転んでいる。これといって趣味はないし、でもじゃあ先輩みたいに突発温泉だ、弾丸で箱根だ! というテンションにはならない。ひたすら、寝て、起きて、パンを食べている。

 本当は、白米を食べないととは思っている。
 というのは、大学時代のサークルの同期が農家の嫁になっていて、10キロのコメを送ってきてくれているのだ。コメは、たぶん良いやつだ。農家が密かに食っている本当にうまいコメを送ってきてくれている。たしかに、炊くとうまい。ウチの、1人暮らし用の適当な炊飯器で炊いても美味いのだ。

 ただ、白米を炊いたら、おかずを用意しなければならない。

 パンならいい。パンなら、マーガリンと、はちみつで何とかなる。甘いのはどうかなーと思うんだったら、トマトを切って、ハムを置けばいい。ただ、白米はそうはいかない。
 味噌汁を作らねばならないし、納豆だったら、ねぎをきらねばならない。生卵は手軽と言えば手軽だけど、卵かけごはんオンリーという訳にもいかぬだろう。もう一品、おかずを用意するそのひと手間が、白米をわたしから遠ざける。
 おかずの作り置き、という概念も、わたしにはなかった。
 さわやかステキOLというものは、休みの日におかずを作り置きして、日々のお弁当に詰めたり、お夕飯にするらしい。おひたし、煮物、ちょっとした和え物。クックパッドには「簡単」「お手軽」「時短」「無限に食べれる」の文字が躍るが、無限なんてものはない。作った分だけしか、おかずはないのだ。長い時間かけて作った割に、おかずがなくなるのはいっしゅんだ。

 その点、パンはいい。パンは買ったら、それがもう、ごはんだ。

 ”準急は止まる駅”から徒歩で12分のところに私のアパートはある。その8分目のところに、個人経営のパン屋さんがあって。
 「コ・パーン」というお店。「コ・パーン」。思わず口に出したくなる名前だと思う。朝、通勤するときにはもう店は開いていて、私が残業して21時くらいになったら「コパーン・閉店まぢかタイムセール」をほぼ毎日やっている。
 「まじか」を「マジか」の意味だと思っていたら、違った。「間近」ね。

 そこに、タイムセールで、300円で詰められている売れ残りの総菜パンたちに、わたしはよく出会う。

 最高じゃないかい。総菜パン。

 総菜パンがあれば飢えることはない。総菜パンがあれば、おかず作らなくていい。
 いや白米、好きだよ。でもね、炊いて、おかずをつくるほど、好きなわけじゃないんだ。

 恋人がいたころ、恋人のためにご飯を作っていた時期があった事を思い出した。そこで、「あ、自分は料理が嫌いってわけじゃないんだな」とも思った。だけど今こうして総菜パンを買ってしまう程度に、料理をしないってことは、料理することは自分の為に作る程度には好きじゃなかったんだな、と思う。
 私は結局、恋人が好きだったわけで、料理が好きなわけじゃなかった。その恋人も、2年前くらい。OLになって一月経ったころくらいに、別れてしまったけれど。

 3連休の初日。昼過ぎになってしまって、朝ごはんを14時にたべている。
 総菜パンを食べている。

 「マカロニパスタパン」、って、何?

(つづく)

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