見出し画像

5-12 位置付けチーズケーキ 自宅廊下チーズケーキ

受話器を取ったよ。家に設置している電話が鳴ったので。

「今度の土日にね、4人で遊ばない?」隣のクラスの彼女の提案だったよ。

彼女が示す4人とは、彼女自身と彼女の友達2人、この3人の女に僕を加えた構成のことである。彼女が住む集落に行くには車を使わないといけない。

「また電話するね」彼女は言って、通話を終えたよ。

僕は壁に画鋲で突き刺されている紙に載る、クラスメートたちの電話番号を見たよ。1年生のときも2年生のときもクラスは別々だったから、彼女の住む家へこちらから連絡する手段を僕は知らない。

夜眠っている間に夢を見たよ。市民体育館にボールかごが置かれ、3人の女の子が「かごの折りたたみ方を私たちは知らない」と主張してくるのだが、僕は「たぶん女子は階段を200往復するように男子バスケ部のコーチから説教と指示をされることはないから、ミスを気にしなくていい。大丈夫」と答えているんだ。

「電話きたでしょ」3年1組の教室で伝達役の女の子が僕に伝達してきたよ、この者が僕の連絡先をあの者に教えたのだ。「電話だとテンション高くてさらにかわいかったって」

「そんなことはないと思うけど」

あの子はあの子自身が好きな僕のことを、僕がいる場所と違う場所に置こうとしてくる。そこにはいない、僕は。

「どうだった?」2本の尻尾の彼女は電話で僕に尋ねたよ。

「親に訊いたけど、無理だって」僕は嘘をつくよ。

僕に恋する彼女の魅力についてまとめるのは難しい。つまり、僕を好いてくれているのに申し訳ないが、僕は彼女の何が個性なのかほぼ全くわかっていないのである。

彼女は顔がかわいいわけではないし、頭がよいわけではない。おもしろいことを言えるわけではないし、絵がうまいわけではない。何が得意で何が苦手なのか。知るためにはもっと時間を共有しないといけない。

皮肉なことではあるが、彼女の仲間である2人の女の子についてなら、まだ僕は位置付けがしやすいんだよね。

1人目、髪の毛がもじゃもじゃのほうの彼女は細く小さくて、大人しく、けっこう知性がある。ぼうっとしていて、たまに老婆のような聞き逃しや勘違いをするため、的外れという意味でおもしろい指摘や反論を行うことがあって、僕はこの子のことはまあまあ好きと言える。

もう1人の彼女は、顔がとてつもなくかわいいとされる。しかし、それくらいしか美点がないというのも衆目の一致するところ。極論だが容姿が美しい以外の長所がない。自己中心的なところを隠そうとしないんだよね。彼女に対する批判の声は度々聞くが称賛の声は聞かないよ。実はこの者は、男子バスケ部の副キャプテンで県有数のポイントガードである彼との交際を1年生のころに開始した。その後は色々あったんだ。

それぞれがランキングを作成しているよ。あの女子は僕を1位に位置づけている。でも僕は彼女を1位には位置づけていない。僕の1位は別の女子なんだね。

【本質のテキスト5「位置付けチーズケーキ 皿13」に続きます】


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?