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7-6 トイ問いと意図 別の品も買うのか

落としちゃった。僕は右手を伸ばして畳から拾い上げるよ。恐竜をパソコンの横、机の上に置いていたのだが、手首と肘の間くらいがぶつかっちゃったんだよ。粗略に扱ってはいけない大切な物なのだが、触る機会が多ければ傷みやすいよね。

弾みで外れてしまった尻尾を繋ぎ直したよ。繰り返し遊んだ僕は、変形を誰のどの説明も聞かないで遂行できるようになったよ。最終的な答えだけでなく解法を暗記するのが大事なんだね。だからといって遊び尽くしたとは思っていなくて発見と感動の余地はまだまだある。

でも同時に次の段階に移り続けたいとも常に考えているよ。この恐竜の同類を増やしたいとしばしば思うんだ。今回の購入を通じて失いかけていた自分の一面を回復できたと感じているよ。僕がおもちゃとともにあるという自覚を絶対に失ってはいけない。

現にすでにとても気にしているおもちゃがあるんだよね。紫色の恐竜なんだ。茶色の恐竜が悪者軍団に属していたときの首領なんだよ。発売が発表されたのだ。

買うか、買わないか。買うんだよ。買うのを妨げる理由って依然として1つで高額さだけなんだよね。紫の恐竜は茶色の恐竜よりもさらに希望小売価格が高いんだ。ねぎ乗せラーメン大盛りにして35杯分程度の値段なんだよ。

その分茶色の恐竜よりもさらにサイズが大きい。茶色の恐竜も僕が片手だけで持つには不安になるほどおもちゃとしては大きいのだったが、それを上回るんだ。

買い物を以前よりもしやすくなっていて、それは僕が稼ぐ会社を変えた背景が理由として大きい。転職したことで、得られるお金はいくらか増え、ゆえに趣味に当てられるお金も増やせるのではないかな。前の職場付近よりおもちゃの街にかなり近くなったしね。

そういう条件が揃って今はおもちゃ、特にまだ入手していないおもちゃについてしょっちゅう考えているというわけなんだよね。これが本当の僕だったのかな。おもちゃを見ることは僕自身を見ることだったんだ。直視しなければ気づきはなかった。

茶色の恐竜を購入した1件が突破口として機能したよね、日常という山岳を貫いて先へ通じた。いくらかの勇気を要したよ、みんなそんな気持ちなのかな。初めて大きな買い物をするときは。

かつて欲しがってきたものたちは実のところ本当に欲しいものではなかったのだろうか。僕の部屋にはいくつもの戦闘ロボットのプラモデルが2本の足で立ったりスタンドで固定されたりして飾られている。僕の身近なおもちゃは数年間これらだったよ。

とくに大学生のときには購買意欲にしたがっていくつもプラモデルを買ったよ。近くの家電量販店で眺める時間が好きだったし、新しいものやかっこいいものが売られていると嬉しかったよ。

過程の只中を歩む僕でしかなかったのかな。関心はもっと高価なおもちゃへと向いている。あのとき貧乏な状態だったから。貧乏な状態の僕と少しお金を得るようになった状態の僕は違うのか。その種の一過性は悲しい。

器に甘い液をなみなみと注いだときみたいなんだ。紫の恐竜を考えてばかりで、このことで僕は頭がいっぱいなんだよね。紫の恐竜は赤い目玉をぎょろぎょろと動かせるらしい。前足はおまけのように細くてちっちゃい。足は太い。頭としっぽは大きい。人型に変形すると、右手に恐竜の頭、左手に恐竜の尻尾を備え武器として活用できる。

僕は店舗で注文しておこうと決断したよ。茶色の恐竜を買ったときには、お店で売られていないだろうから通販で買おうとの判断だったが、実はお店で売られていたし通販よりも安価だった。駅前のビルの店に寄ったよ。経験を踏まえた形だよね。

予約するよ。高額商品のため、どうやら予約の時点で紙幣を1枚渡しておかないといけないんだって。そして発売後受け取るときに、残りの2枚以上分を支払う。ちょっと客に厳しいんだね。そしてこのお店、値段が他店よりちょっと高いかもしれない。希望小売価格からあまり値引きされていないんだ。

仕方ないね。僕自身の経済性という観点ではまた失敗してしまった。おもちゃの作り手、おもちゃの売り手から踊らされちゃうよね。でも今の僕のままでは僕を感動させるおもちゃを生み出せないので仕方ない。

それにしても感受し直せるよ、こんな特別な場所にいると。視認できていなかった人工物の豊富さにね。このフロアは変形する類のおもちゃを結集させているのだけれどおもちゃだけでなくおもちゃを支える品々、たとえばスプレー、工具、台座なども並んでいるのだ。

変形するおもちゃの業界には実は正規品と非正規品が両立しているのも特色なんだよね。本来この国の会社が生産や販売を手掛けているのだが、この会社に帰属するキャラクターを、別の国の複数の会社がもしかしたら勝手に製品化の開発を進めて売っている。

そしてそれらは品質が非常に優れていたり、素晴らしい美観だったりする。なんとオリジナルを凌ぐとさえ見なせる場合も。そういった品々は家電量販店などではなくこのようなホビーショップが取り扱っているよ。僕の選択肢の多さも意味する。

【本質のテキスト7「トイ問いと意図 問い7」に続きます】


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