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5-3 位置付けチーズケーキ 自室チーズケーキ

山間の集落に着いた黒いタイヤと白いボディのスクールバスから降りた僕と弟は、海の向こうの大陸で試合を繰り広げているバスケットボールリーグについて話をしながら丘を上ったよ。

自室で僕は部活ノートを読み返したよ。地区大会1日目と2日目に僕たちが簡単にねじ伏せたあの学校のあの選手たちは、部活動を退いたんだ。彼らは僕よりもプレー全般が上手だった。

ここの壁にはポスターを貼っているよ。紫色のユニフォームを着た1人はこちらを見ながらドリブルをついているし、水色のユニフォームを着た2人はどちらもコーンロウにヘッドバンドのおしゃれでこちらを見ているよ。

丘の上の古い家で僕が実行できる部屋の装飾は程度が低いよ。本棚にバスケットボールの雑誌が少しずつ増えていくのはそこそこ気に入っているけどね、発売された順に背表紙の数字が正しく並んでいるよ。そのうちの1冊を手に取ったよ。

中ほどのページは懸賞はがきを僕が応募のために切り取ったから欠けているんだ。スクールバスの乗り場にこの村で唯一のポストが置かれているんだよね。僕はインタビューのページを開いたよ。

「今季は飛躍のシーズンとなったね」インタビュアーが取材対象の選手に話しかけている。「君はチームの中心として活躍し続け、全国区の選手となった。チームをプレーオフにも導いた」

「ああ。確かに成功したシーズンと言えると思うよ」選手が応じている。「これまで勝利に繋がらない期間が続いていたけど、昨季の僕らは1人ひとりがステップアップし、熟成したケミストリーを見せつけた。リーグに旋風を巻き起こせたと思う」

「とくにレギュラーシーズン終盤、君は快進撃の立役者となった。君は6試合連続で28得点以上をマークし、キャリア初のトリプルダブルも達成した。チームも8連勝を飾ったし、君はこの期間で2回のクラッチシュートを決めたね」

「その期間は全てがうまく機能していたように感じられたよ。僕自身も勢いづいていた。シーズン終盤に調子を上げていく形はチームとしての理想だ。でも、真の強豪はシーズン序盤や半ばにも強さを堅持する。僕たちもそれを目指さなければならない」

「最近はどのように過ごしている?」

「プレーオフの試合を見ているよ。僕たちがその舞台にいないのは残念だけどね。それからもちろん、家族と過ごすことも楽しんでいる。シーズン中は思うように時間を共有できないことが多いからね。僕はバスケットボール選手だけど、それ以前に夫であり、父親であり、息子だ。今は愛する人たちといられて充実しているし、リラックスできているよ」

「ナショナルチームでの練習も楽しみなんじゃない?」

「もちろん。わくわくしているよ。母国の代表となるのは誇らしく名誉なことだ。普段は敵として戦っている手強い選手たちとチームメートとなり、大きな刺激を受けるだろう。最高の体験だよ。そして優勝という使命を果たすのみさ」

「プロ選手になりたいと思ったのはいつ?」

「10代前半だよ。観客で埋め尽くされたアリーナでプレーしたいと、テレビを見て感じていった。そのステージに辿り着けることを夢見て、希望と自信は常に持っていたよ。僕が最大の努力を続けた選手の1人であることは間違いないと思う」

「バスケットボール選手を目指す子どもたちにアドバイスするなら?」

「ハードワークを継続することだ。よく考えて、よく努力すること。自分がどこへ到達したいのかはっきりさせれば、そのために何をすべきかわかってくるはず。あとは向上心を持って続けるのみだよ」

夏休みの近くに定期試験が行われるから、僕は勉強するんだよ。学年主任のおばさんが述べていたように、僕たちには高校受験があるんだ。僕は地元で最も学力が必要とされる高校に進む予定で、失敗するとは考えづらいよ。

【本質のテキスト5「位置付けチーズケーキ 皿4」に続きます】


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