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旅立ちの時

夕方、お医者さんから電話があった。


お母様の呼吸が荒くなり、時々無呼吸になっています。
苦しそうに目を閉じていて、会話できず、眠っている時間が長いです。
そろそろお迎えが近づいているように思います。
心の準備をしてください。
持続皮下注射のレスキューボタンは、苦しそうなら何度でも押してあげてください。
口は、スポンジのようなもので湿らせてあげると、楽になるかも知れません。
このような状態になると、会話は難しいと思いますが、耳は最後まで聞こえていると言われますので、話しかけてあげてください。



母の命が、もう長くないかも知れないと
初めて途方に暮れたのは
16年前の乳がんの手術のとき

辛い治療も明るく乗り越えて
16年の時を共に過ごした

母の命が、もう長くないのだと
突きつけられたのは
4年ほど前の
卵巣がんの手術のとき

あれから4年弱
とても辛い治療を続けながら
元気に働き
たくさん旅行に出かけ
母は明るく前向きに過ごしてきた


ここ一年弱は
じわじわと弱っているように見えた
それでも母は
元気に前向きに過ごしていた

3ヶ月前に腸閉塞で倒れ
体調悪化のスピードが早くなり

いつしか
1週間前より今日は具合が悪い
という状態が続いた

10月に入って
ますます体調が悪化した

しんどくてしんどくて
つらくてたまらない
それでも
もう少し良くなるかも知れない
望みを捨てずに
腐らずに
ずっと頑張って来た

そして今週
ますますしんどくなり
どんどん病状が進んでいった

1日、1日と
凄まじい勢いで
悪化した


今日の朝は
私にも来なくていいと言うほど
しんどかった


それでも
お医者さんから電話を貰って

もう本当に
これでお別れかと思ったら
迷惑だろうけど
行かずにはいられなかった
仕事の後に
顔を出すと
苦しみながらも


向こう向く

など
少しの言葉と
ウンウンと頷いて
会話はできた


私がいつまでもまとわりついていたら
早く行ってあげて

子どもたちの食事の心配までして
目もしっかり開いて

これが私のおかあさんだ
ずっと
私や子どもたちのことを
見守って気遣ってくれてきた
私のおかあさんだ

ありがとう

今までありがとう

苦しいよね
辛いよね

何にも分かってあげられないし
代わってあげることもできない

3ヶ月も苦しみ続けて
本当に辛かったよね
癌の治療もしてきて
ずっと長い間頑張って
体もしんどくて
本当によく頑張ったよね

寂しいけど
ずっと一緒に過ごしたいけど
こんなに苦しんでいる母を
引き止めることは出来ない

あとちょっとで
本当にお別れだよ

なんて言葉をかければいいか
分からずに
手をさすって
小さな氷を口に入れ
体の向きを変えてあげるしか出来ない

お母さん大好きだよ

言うタイミングが取れなくて

言えてない

でも
分かってくれてるよね


今日の夜か
明日にでも
もしかしたら
お迎えがあるかも知れないと
言われている

私はどうしていいか分からず
なんだか無駄な動きを
してしまっている気がする



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