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空想 

ANDROID:

どこにでもいるロボットでした
都合の言い様に扱われ
犬畜生よりも酷く冷たい路に放り出されて
夜中にさえわたる月だけが友というべきものでした
特権をすれ違えた人間の笑みは
どこまでも自愛に満ちていました
水を得た魚のように心が飛び跳ねていました
まさに天上を知らず
巡る星さえ今宵我がための、飾りの一端に過ぎませんでした
地上説だけが逆説を説いていました

理屈などいくらでも増産できました
ある日だれかが言いました
ー涙を流すものが何もないなんて悲劇よ
ロボットは壊れてしまうでしょう
合理は時に不都合な感情を浮彫にします
鏡をみれば同じ顔が一列になって
同じ方向に同じ足音を立てて
一体どこに向かうのかも分からないどこかへ進んでいます
繰り返されるコピーの行方はAIにまかされたまま
本音を吐き出すことはないでしょう

星空になるとき
煌めきや夢といったものを空に置いてきてしまったのでしょう
それはロボットの本懐かもしれません

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