苦さも大事な調味料

「菜の花が咲ききっていました。残念です。」

「葉物野菜が苦くなっていて食べられませんでした。」

「筋張っていておいしくいただけませんでした。」

「ジャガイモの芽が出ていてショックでした…。」

農場の野菜を食べてくださっている方の中には、一度はこんな風に思った方も少なくないかもしれません。特に春になると、このような声を多くいただきます。
でも、もしかしたら少し考え方を変えるだけで、春の野菜の見方が変わったり、「苦さ」という調味料を楽しく味わえるようになるのかもしれないと思いました。
 
12月から3月にかけて、岡山の県北である美作市では、野菜の栽培というよりも、葉物野菜や根物野菜は畑の土の上で、あるいはサツマイモは元鉱山のトンネルで、ジャガイモなどは冷蔵庫での保管をしています。

3月になり、少し寒さが和らいでくると、野菜たちは、身体のさまざまな所にあるセンサーで光や温度を感知して、次の新しい命の誕生に、エネルギーを注ぎ始めます。

恥ずかしながら、私は農場で春を迎えるまで、「菜の花」は一種類だと思っていました。
水菜、白菜、カブ、ターサイ、ほうれん草、そして大根も。
それぞれ少しずつ味も見た目もちがうけれど菜の花を咲かせます。

秋の終わりごろから冬にかけて、濃い緑色をしていた野菜たちは、少し色あせ、それまで実に一生懸命送っていた栄養分を今度は上へ上へと届けていきます。

そして菜の花は咲き始めます。
つぼみが出てきたなあと思ったらあっという間に開花していくのです。

ついつい菜の花に見とれてしまいがちですが、そうしているといつの間にか、つぼみが無くなり、収穫できるものも無くなてしまいます。
だから、菜の花を咲かせる野菜たちの力強さや、最後にエネルギーをふり絞るようすにパワーをもらいながら私たちもそのエネルギーを「いただいて」います。

次の命のために、全身に残っている全てを捧げる植物を感じると、私たちがいかにそれをついつい見逃してしまっているか痛感するのでした。


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