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『失われたものたちの国』出ます!

 年末年始にかけて翻訳していたジョン・コナリーの新作『失われたものたちの国』が、今月28日に刊行されます。『失われたものたちの本』のヒットを承けて手にとって下さる方も多いのではないかと思うと、今から割と緊張しています。翻訳の質もそうですが、やはりあれだけ綺麗に終わったはずの作品です。この「続編」を読者がどう受け止めるのか、そこはやはり不安です。

 訳者としても当然、作品を読む前にはその不安がありました。が、僕にとっては完全に杞憂でした。とても面白く、とても悪趣味で(いい意味で)、とても胸に迫る、素晴らしいファンタジー小説になっていると感じました。

 続編が生まれるに至った経緯は、訳者あとがきでも少し触れましたし、『紙魚の手帖』2024年6月号に掲載される作者インタビューにも掲載されてますので、そちらをぜひ。「なるほど!」と思ってしまう、とても深みのある理由をジョン・コナリーが語ってくれています。

 いわゆるファンタジー小説と呼ばれるものの中には、「ファンタジーっぽい小説」も多く含まれています。「設定だけ見れば確かにファンタジックだけど、これはいろんなところで拾ってきた要素を組み合わせただけのものだな」みたいなものも、決して少なくありません。既存の要素や流行といった外的な要素によって出来ている作品といえばいいのでしょうか。無論、そういうものが嫌いなわけでもないのですが、僕はそれをファンタジーとは区別しています。

 ファンタジー小説にはやはり、作者の人生経験から生じたものがあってほしい──心に開いた傷口や、心の中に開いた花の中から、肉や血管を通して出てくる、作者の匂いや色が染み付いた空想があってほしいと思っています。ジョン・コナリーは、そんな感じの「彼の血肉から生まれた空想」を、極上の文章で作品に仕立て上げてくれる、稀有な作家のひとりだと思います。

 さて、発売まであと3週間。未読の方はぜひ、まずは第一作である『失われたものたちの本』を読んで下さるよう、強く強くオススメしておきます!

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