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【読書記録】

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てぃむの投稿の中から、【読書記録】を集めたものになります!
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記事一覧

【読書記録】伊予原 新「八月の銀の雪」

 今回は伊予原新の作品「八月の銀の雪」を読んだ。この作品は全部で5つの物語が収められている短編集である。 表題の「八月の銀の雪」は就職に苦戦している修士の学生がコンビニで働く博士課程の留学生と出会う話である。八月に降る「銀の雪」とは一体何なのか、是非読んで確かめてみてほしい。 私は今回の作品をほぼジャケ買いのように買ってしまった。そのくらい表紙の絵が美しい。親子が夕暮れの海でダイナミックに躍動するクジラを観ている絵なのだが、これは二つ目の作品「海へ還る日」からのも

【読書記録】さだまさし「解夏」

 今回はさだまさしの作品「解夏」を読みました。  さだまさしは言わずと知れた、日本を代表するシンガーソングライターです。「北の国から」を始め様々な曲を手掛けています。  「解夏」は4つの短編を集めた短編集となっており、作家とは一味違った作詞家の片鱗が感じられる作品でした。 表題の「解夏」ではだんだん目が見えなくなってしまう病気を抱える男性の話がつづられる。手に取るようにわかる心情と、巧みな描写によって生み出される日常感によって他人事とは思えない物語になっています。

【読書記録】辻村深月「傲慢と善良」 

 今回は辻村深月の作品「傲慢と善良」を読みました。しばらく前から話題となっており帯の「人生で一番刺さった小説」という文言には思わず惹かれます。 私もとうとう我慢できずに購入してあっという間に読んでしまいました。 この本は 恋愛と婚活 を主題として書かれた本になっています。 この本は主に二部から構成されており、第一部の視点は架という人物です。彼は婚約していた真実と暮らしていましたが、ある日飲み会の後に家に帰ると真実は姿を消していました。 以前にストーカーの

【読書記録】吉田修一「おかえり 横道世之介」 

 今回は前回の作品の続編にあたる、吉田修一の作品「おかえり 横道世之介」を読みました。 この作品は前回の読書記録で紹介した「横道世之介」から何年か経ち、大学を卒業した世之介の生活を1年間分切り取った作品になっています。こちらももちろん、大きな事件は起こりません。あくまでも ”まあこのくらいならありそうだな” というラインを上手に攻めながら、要所でくすっと笑わせてくれる作品になっています。 大学時代が終わって、前作で出てきた世之介以外のキャラクター達はまったく出てき

【読書記録】吉田修一「横道世之介」 

 今回は吉田修一の作品「横道世之介」を読みました。 時代はバブル真っ只中。長崎の田舎から出てきた世之介は東京の荒波に流され、翻弄されながらも楽しい大学生活を送っていく物語です。全部で12個の章に分かれており、4月から3月までの大学一年生の一年間を描いています。 世之介はぼーっとしていて、周りに流されまくる頼りない大学生です。ただ、いつでもマイペースで楽観的、そして困っている人がいたら思わず声をかけてしまうような、そんな素敵な人柄も垣間見えます。 本文の中で、大学

【読書記録】小川洋子「密やかな結晶」

今回は小川洋子の作品「密やかな結晶」を読みました。 小川洋子の作品は独特の美しい世界観で知られています。私も以前に『猫を抱いて象と泳ぐ』の時にも力説しましたが、本当に美しく小説でしか表現できない世界を私たちに見せてくれます。 今回の『密やかな結晶』でも非常に美しい世界観に浸らせてもらいました。 この物語の舞台はとある島です。この島ではたまに、”何か”が消えていきます。その”何か”はあらゆるものです。消滅がおこった朝には、島民は消滅の気配を感じます。そしても

【読書記録】ガストン・ルルー「オペラ座の怪人」長島良三 訳

 今回はガストン・ルルーの作品「オペラ座の怪人」を読みました。現在はミュージカルとして有名な作品ですが、原作は小説です。 ガストン・ルルーはジャーナリストとして活躍していた人物です。裁判記録や犯罪に関する記事などを類まれなる文才を発揮して執筆していました。その後小説も執筆するようになります。『黄色い部屋の謎』などが有名作品となっており、密室トリックの金字塔ともいえる作品です。私はまだ読んだことがありませんが。 この話は芸術の都パリに建つオペラ座が舞台です。オペラ座

【読書記録】東野圭吾「聖女の救済」 

 今回は東野圭吾の作品「聖女の救済」を読みました。 東野圭吾は言わずと知れた現代の有名作家で、多くの人がs各品を読んだことがあるのではないでしょうか。その中でも今回読んだ作品はドラマ化もされているガリレオシリーズになります。もっとも私自身はドラマはあまり見たことがないのでこの作品が映像化されたのかはわかりませんが。 今回の作品は一人の男性が殺されるところから始まります。そして東野圭吾の作品では珍しく、冒頭で読者に犯人が明かされるスタイルで物語が展開していきます。

【読書記録】村上春樹「遠い太鼓」

 今回は村上春樹の作品「遠い太鼓」を読みました。 最近やっと海外旅行にも行けるような雰囲気になってきました。私も大学生のうちにそれなりの海外旅行ができればいいなと思っているのですが、なかなか実際の旅行をイメージするのは難しいものです。そこで夏休みの海外旅行の計画を立て始める今の時期に海外旅行気分を高めるために「遠い太鼓」を読みました。これを読んでイタリアに行きたくなったかはさておき。 さて上の文章からもなんとなくわかる通り、この作品は村上春樹自身がヨーロッパを転々

【読書記録】森鴎外「舞姫」 井上靖 訳 

 今回は森鴎外の作品「舞姫」を読みました。もちろん現代語訳版ですが。高校3年生の時に授業で初めて出会って以来、お気に入りの作品の一つです。 森鴎外は言わずと知れた明治・大正の文豪の一人です。一方、東京大学医学部卒の立派な陸軍医官でもあり、日清戦争に参加するなどとても多彩な人物としても知られています。 『舞姫』は生涯残した作品の中でも特に評価の高い作品の一つであり、高校生の教科書にも採用されている(今はどうなのかは知りませんが、いずれにせよ私が高校生のころにはそうで

【読書記録】アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」青木久恵訳 

 今回はアガサ・クリスティの作品「そして誰もいなくなった」を読んだ。 この作品は言わずと知れた名作で、日本でも映画になるなど今でも根強い人気のある作品です。ミステリー作家として有名な赤川次郎も好きな小説として真っ先に挙げるなどプロから見ても素晴らしい作品になっています。 今回はコナン・ドイルの作品を読んでとっても楽しかったので続いて英文学ミステリーシリーズとして読みました。 この物語の舞台は「兵隊島」と呼ばれる怪しげな島です。そこに、それぞれの形で10人の人が

【読書記録】原田マハ「暗幕のゲルニカ」 

 今回は原田マハの作品「暗幕のゲルニカ」を読みました。 皆さんは『ゲルニカ』という絵画を知っていますか? 私もこの作品を読むまでは『ゲルニカ』と言われてパッと頭に思い浮かぶ,、なんてことはなかったのですが、おそらく一度は見たことがある、とても有名な作品になっています。この物語では『ゲルニカ』をめぐる事件と、『ゲルニカ』執筆時のピカソの様子が同時並行で語られていきます。 この作品は先ほども述べたように大きく分けて二つの章に分かれておりそれぞれ現代の『ゲルニカ』をめ

【読書記録】C・ドイル「シャーロックホームズの冒険」小林司/東山あかね 訳 

 今回はC・ドイルの作品「シャーロックホームズの冒険」を読みました。 この作品は私が読書好きになったきっかけとなった作品といってもよいほど思い入れのあるものになります。小学校高学年の時には江戸川乱歩と並びどっぷりとはまった作品の一つです。読書好きの方なら通ってきている方も多いのでは? もちろんこうして大きくなって読み返してみると、いかに緻密で細かいところまで作りこまれた作品かということがよくわかります。 今回はシャーロックホームズ全集③ シャーロックホームズの

【読書記録】村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」 

 今回は村上春樹の作品「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読みました。 4月13日(つまり執筆日!)にまた新たな長編が発売されるということで村上春樹気分を高めるために再読です。残念ながら新歓を買う余裕はありませんが、、もう3年近く読んでいなかった作品なので新たな気持ちで読むことができました。 さて、この作品ですが世界観が圧巻です。この作品では冒頭から二つの章に分かれています。一つ目が『ハードボイルド・ワンダーランド』でもう一つが『世界の終り』で