運び手
全ての商品に「運び手」の活躍あり。このことに自覚的になったのは、大学生になってからであった。
コンビニのバイトを始めると、運送業のお兄さんと会話を交わすようになる。指をパチっと鳴らせば、商品が補充されるわけではない。ここでは確実に人が動いている。人力で運ばれてきた食品が、誰にも口にされることなく、廃棄される現実を目にするたびに、運送のお兄さんの顔が頭に浮かんでいた。
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私たちが日常生活の中で、最も対面する機会がある「運び手」は、「宅配」の配達員である。スーパーやコンビニに商品を運ぶ運送業者と、直接会話をする機会がない人でも、「宅配」の配達員とは一、二言葉を交わしたことはあるだろう。
引用したのは、『やさぐれトラックドライバーの一本道迷路』の中の一節。
著者の橋本愛喜は、元トラックドライバーでライター。上記の引用文は、一経験者の見地から、「世間の認識」と「現実」の乖離を指摘した文章となっている。
私たちは、生活を支える「物流」の、ほんの一部(数%)しか認識していない。それでいて、その一部である「宅配」に対する消費者の態度は、けっして柔和なものだとは言えない。
それはなぜか。
著者の橋本は、その大きな原因の一つとして「送料無料」問題をあげている。
私自身、オンラインショップを利用しはじめた10代の頃、商品の代金以外かからない、つまり「送料無料」であることに感動し、その「お得感」に魅了された。
感動というのは長くは続かないもので、「送料無料」は「そうであったら嬉しい」ものから「よくあるサービス」に変わり、しまいには「そうであって当然」に行き着いてしまう。
こうなると、橋本の危惧する「運び手の軽視」は避けられない。今では「置き配」といった、「運び手」の姿を直接見なくて済むサービスも普及しているため、消費者の意識が変わらなければ、ますます「運び手の軽視」は深刻化していくだろう。
「物流」の問題は、他人事では済まされない。
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