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【明治神宮】永遠の森をつくった熱情の人・本多静六

明治神宮に人工の森をつくった日本林学の先駆者・本多静六。彼が目指したのは、人の手を介さずとも永遠に存続する森です。昨年創建100年という節目を迎えた神宮の杜(もり)はその願い通りに成長し、現在も悠々と営みを続けています。(ひととき2021年2月号より一部抜粋し、「永遠の森」が実現するまでの道のりをお伝えします)

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 この「永遠の森」誕生のためには、官民が一体となっての協力が必要とされたが、実際に総合計画を考え、図面を描き、植栽計画を立て、監督、管理を担ったのは近代林学の先駆者たちであり、庭園学、造園学の第一人者たちだった。そしてその主要メンバーのひとりが、当時、日比谷公園の設計ですでに名を成していた本多静六(ほんだせいろく)だ。

 計画当初、本多は林学や生態学の立場から、東京の街中に人工の森をつくることに反対だったが、財界の中心人物であり、教育や公共事業にも力を注いでいた同郷の渋沢栄一の熱意に打たれた。そこで本多が考えたのが、100年、200年先を見据えた、持続可能な(サステイナブル)森づくりである。

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 本多は神宮の杜をつくるにあたって、ドイツで修得した知見をもとに、東京の気候に適し、天然更新する「永遠の森」にしようと、他の神社の杜に多く見る針葉樹ではなく、広葉樹による森を強く提案した。これは、もともと、この地に存在していた森林の状態を再現することができれば、その林相(森林の様相)は永く維持されるであろうという考えからだ。

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本殿の両脇の大クスノキは鎮座当時に植栽された明治神宮の御神木。左は枝葉が重なり合って1本のクスノキのように見えることから夫婦楠〈めおとぐす〉とよばれ、縁結びや夫婦円満の象徴とされる

 これに対し、明治神宮創建の調査、審議のトップ機関「神社奉祀調査会」の会長で、時の内務大臣であった大隈重信は、伊勢神宮や日光の杉並木のような雄大で荘厳な景観が望ましいと横ヤリを入れてきた。しかし、本多やその下で林学、造園学を修めた上原敬二らは、実物のスギの成長状態の標本を示しながら、代々木のスギの生育は、よその地のスギ林に比べて10~20パーセント不良であると反論、大隈提案を退けたのだった。

企画・構成=さくら編集工房 写真=荒井孝治

明治神宮
東京都渋谷区代々木神園町1-1
☎03-3379-5511
http://meijijingu.or.jp
料金:御苑のみ維持協力金500円

――本誌では、様々な困難に打ち勝ってきた静六の生涯も紹介しています。日本初の西洋式公園である日比谷公園や別府温泉の奥座敷として知られる由布院。現地を巡りながら、その発展の礎を築いた静六の「100年先を見通す知恵」に迫ります。

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特集「本多静六 永遠の森をつくった明治人――」
◉紀行1 日本の公園の父の出発点
 日比谷公園
 静六の生涯・熱情87年
◉紀行2 本多が未来を示した温泉地
 由布院
 由布院温泉〔案内図〕
◉紀行3 永遠を目指した人工の森
 明治神宮の杜

▼出典:ひととき2021年2月号


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