『ゲゲゲのゲーテ』:なぜか「ゲーテ推し」だった漫画家・水木しげるの人生観
漫画家の水木しげるさんは2015年に亡くなられましたが、生前の元気なご活躍ぶりにとても好感をもっていました。今回、水木しげる著『ゲゲゲのゲーテ』(双葉社、2015年)を読んで、水木さんの愛読書がドイツの小説家・劇作家ゲーテだったと初めて知りました。水木さんがゲーテのどういう部分から影響を受けておられたのかを知りたいと思いました。
水木さんは、本書に収録されたインタビューで、ご自分の80%はゲーテから成り立っていると述べています。そして、徴兵されて南方戦線に送られたときにも、岩波文庫の『ゲーテとの対話』3冊を持っていったということが書かれていました。
戦時中、水木さんは10代の終わりごろ、ご自分がやがて徴兵されるだろうと感じ、人生の意味について考えるようになり、そこで、哲学書などいろいろな本を読むようになり、その中でゲーテの言葉が一番しっくりきたということです。戦時中に育った世代の人たちの壮絶な経験を垣間見たような気がしました。
本書では『ゲーテとの対話』という本の中から、水木さんが気に入っている93の言葉が紹介されています。その中から3つを紹介します。
①「性に合わない人たちとつきあってこそ、うまくやって行くために自制しなければならないし、それを通して、これわれの心の中にあるいろいろ違った側面が刺激されて、発展し完成する。」
②「われわれはただ(中略)黙々と正しい道を歩みつづけ、他人は他人で勝手にあるかせておこう。それが一番いいことさ。」
③「世の中には、当然立つべき立場に立っていることのできる人間というものは、ほんの僅かしかいない。」
そして、このゲーテの3つの言葉から水木さんが引き出している教訓は、①「人づきあいは腹八分」、②「なにをいわれてもそのまま進行する」、③「成功している人は、見えないところで幸運をつかむべく努力している」というものです。
水木さんは、「怠け者になりなさい」というようなことも言うときがありますが、自分のやるべきことを徹底して実行する意志の強さがある方だったなと思います。私も見習いたいと思います。
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