ワイパーの音との隙間で

中学2年の6月、その曲はFM802のヘビーローテーションとしてわたしの前に現れた。これまで聴いたことのないなんだかぴこぴこした音に、力強く真っ直ぐで、それなのにこれまた聞いたことのないなんだか癖のある歌声。歌詞もなんだかちょっと愉快で、でも真っ直ぐだった。ポップスばかり聴いていたわたしには、すべてが新鮮だった。

親の運転する車で運よくオンエアのタイミングに鉢合わせるしか、インターネットの恩恵をまだよく知らない当時のわたしにその曲を聴く術はなかった。我が家の車では、決まってラジオ、それもFM802が流れている。

普段は自転車通学だったが、雨の日は車で送ってもらっていた。その分、ラジオを聴く機会も増えた。おまけにヘビーローテーションときた。何度もその曲に出会い、エンジン音とざぱざぱと雨をかき分けるワイパーの音との隙間で、あのぴこぴこした音と真っ直ぐな歌声を聴いた。

当時、その曲やバンドを深く調べることはなかったけれど、でも確かに好きになっていた。ちなみにこの2年ほど後になって、またもやラジオから同じバンドの曲を聴いて、今度はしっかりとハマり、好きになり、今でもとても大切に思っている。

雨、という言葉が登場する曲が多いバンドだが、わたしはなによりもこの曲を聴きたくなる。わたしにとって梅雨はオンリーワンダーの季節なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?