ブライダル司会奮闘記④

時代と共に結婚式の形式や人気演出は変わってきたけれど、どの時代もサプライズ演出は好まれるようだ。

という事で、今回はサプライズの話をしてみよう。

②サプライズ編

新郎新婦がお互いに対してサプライズする、というのはよくある。特にプロポーズの機会を逃した新郎さんが、結婚式当日にサプライズプロポーズをする事は多い。花束やプレゼントを用意して想いを伝えるシーンは、司会者として前フリした後、ゲストと同じ気持ちで見守る。

思わず感激して涙ぐんでしまう新婦さん。ゲストからの歓喜の野次に照れくさそうに笑う新郎さん。

そんなシーンに立ち会える事も、ブライダル司会の醍醐味のひとつだ。最近は披露宴でのサプライズよりも、チャペルで二人だけの時間を持ちながらサプライズするカップルが多いように思うけれど。

他には、両親やゲストへのサプライズ。披露宴の演出として行うサプライズもあれば、新郎新婦と対象ゲストしか分からないサプライズもある。たとえば、デザートタイムにそのゲストにだけスタッフから特別なデザートプレートが届けられ、お祝いメッセージが添えられていたりする。

新郎新婦の想いを形にするサプライズ演出は、担当プランナーとスタッフが協力しながら成功させる。サプライズされた方の驚きと嬉しそうな表情に、私達スタッフも嬉しくなる。披露宴の演出に組み込まれるサプライズ演出は、司会者の進行ありきなので、その進め方を相談されたり要望を頂く。だからサプライズ仕掛人である新郎新婦の喜ぶ顔を見ると嬉しいし、うまくいった時は達成感がある。

担当プランナーの〇〇さんにサプライズしたいんです。

と、相談される事も多い。結婚式当日を迎えるまで共に歩んでくれたプランナーにサプライズしたい気持ちは、想像がつく。特にコロナ禍の今は、何度も結婚式を延期しているカップルばかり。結婚式をするかどうか…今していいかどうか悩み続ける新郎新婦にとって、常に寄り添い励ましてくれたプランナーは特別な存在だろう。

けれど新郎新婦からのサプライズをプランナーに知られずに、結婚式当日サプライズの瞬間を迎えるまでには、いろんな関門が立ちはだかる。

まずは打ち合わせ。進行の打ち合わせ後、司会者がプロフィール紹介に向けた打ち合わせをするタイミングで席を外すプランナーの場合、新郎新婦とプランナーへのサプライズ演出の打ち合わせができる。司会者が責任を持ってその内容をプランナー以外のスタッフと共有し、結婚式当日に協力しながらプランナーサプライズを成功させれば良い。問題は、最後までずっと同席するプランナーの場合だ。司会者はもちろん、新郎新婦もプランナーが席を立つタイミングを見計らいながら打ち合わせする。そしてラッキーな事に席を立ってくれた場合、私も新郎新婦も阿吽の呼吸でプランナーサプライズの打ち合わせをする。コソコソと手短に。新郎新婦はいかに端的に自分達の要望を伝えるか、こちらはイメージを共有しながら提案ができるか。お互いに、もの凄い集中力だ笑

話の途中でプランナーが戻ってきたら、もちろん話を切り上げ何事もなかったかのように、プロフィール打ち合わせに戻る。そして次のチャンスを待つ。奇跡的に次のチャンスが来れば良いが、来ない場合は、また阿吽の呼吸でプランナーに席を外させる作戦に出る。「これってどうなってましたっけ!?」なんて声を掛けて離席誘導を試みたりする。時には新郎さんが「当日流すDVDいま会場で見たいんですけど」なんて助け舟を出してくれる事もあるけれど、何も知らないプランナーは笑顔で「じゃあ、司会者さんとの打ち合わせが終わったら会場に行きましょう」なんて言うものだから、新郎新婦と私は心の中で落胆するのである。もちろん連絡先の入った名刺を渡してあるので、後日直接電話が来たり、別のスタッフを経由したりして無事にプランナーサプライズの打ち合わせは行える。

第二関門は、結婚式当日だ。新郎新婦からプランナーへのサプライズの場合、花束やプレゼントを贈る新郎新婦が多い。プランナー用のプレゼントをこっそりブライズルームに用意していたりする。会場スタッフより先に披露宴前に新郎新婦と接触し、進行に直接関わる司会者が、そのプレゼントを会場に移動する大役を担う。プランナーはいきなりブライズルームにやって来る可能性があるし、会場に行く途中でバッタリ遭遇する可能性もある。ただ幸いな事に、最近はプランナーや主要スタッフがインカムを付けている会場が多いので、プランナーの現在地情報を得て遭遇しないルートで会場に向かう。会場に着いたら、私は預かったプレゼントを司会台の中で保管する。他のスタッフが見る可能性が低いからだ。そして披露宴進行に関わるスタッフと情報共有しながらプランナーサプライズに臨む。

大抵は、このプレゼント預かり作戦が成功するのだけれど、たまに予想外にプランナーと遭遇してしまう事もある。目立たない大きさのプレゼントなら気付かれずにやり過ごせるが、一度プランナーへのプレゼントを胸に抱えた状態で遭遇してしまった事がある。

もちろん私が何か言うより先に「それ、どうしたんですか!?」と訊いてくるプランナー。当然だ。どう考えても誤魔化しようがなく「サプライズしたいゲストがいるらしくて、今ブライズルームで預かったんです~」「えっ私そんな話聞いていないですよ」「言いそびれたんじゃないですかねぇ…」「誰にって言ってました?」「うーん、一応サプライズしたいと思ってプレゼントを用意したけど、披露宴中に渡すかどうか考えているみたいですよ。もしかしたら披露宴が終わってから直接渡すかもしれないそうです。だから、披露宴中に渡したい場合はスタッフに教えてください。お名前もその時にって事にしちゃいました」「あ、そうなんですね。ありがとうございます!」……なんて事もあった。我ながら咄嗟に対応したとはいえ、あたかもそうであったかのような、堂々とした態度。嘘八百に心の中で謝りながらなんとか切り抜け、披露宴ではプランナーサプライズは大成功!お開き後に嘘をお詫びした。

スタッフ同士がチームとして協力しながら進める披露宴。特にサプライズはスタッフ間のコミュニケーションと協力が必須だ。司会者はサプライズの仕掛人として新郎新婦に協力する。

ある時。お世話になったプランナーを始め、何人かのスタッフにサプライズをしたいとの依頼。司会者と会場責任者のスタッフが中心となって段取り、新婦さんからそのスタッフ達へメッセージが伝えられ大成功!!

と、思った直後。「私達の想いを受け止め、このサプライズに協力してくれた司会のほんださんと会場責任者の〇〇さんに…」と、最大のサプライズが待っていた!!

会場スタッフと二人、顔を見合わせながらしばらく状況が読めずに動揺していた私達…。仕掛人のつもりが二重に仕掛けられていたサプライズ!全く気が付かなかった。本当に驚いたけれど、とっても嬉しいサプライズの思い出だ。

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